45 ページ5
・
ＬＩＮＥで赤葦くんを呼び出した。
メッセージを送ってから、数分後に既読が付き、体育館裏まで来てもらうことになった。
演劇部の片づけを少し手伝ってから、体育館の外に出た。
校舎の方を見ると、赤葦くんがすぐ近くまで来ていた。
「ごめん。突然呼び出してたりして……私、赤葦くんに話があって……」
少しの間、沈黙。
舞台から、客席を見たときに感じたように赤葦くんの様子はやはりどこかおかしかった。
いつもの赤葦くんとは違って、どこか悲しそうなのだ。
私と徹が本当にキスしている所を見て、そんな顔をするのなら、私にもチャンスがあるかもしれないと淡い期待を寄せていた。
しかし、それは甘い考えだという事を次の赤葦くんの言葉によって、実感させられる。
「俺は……話すことなんて無いです。」
「え……？」
「及川徹と、キス出来て良かったじゃないですか……お似合いですよ。」
言葉とそぐわない先程よりも傷ついた表情の意味は、わたしには到底、理解することができなかった。
何故、そんな顔をするのだろうか。
ずっとその理由を、訊きたくて仕方がないのに赤葦くんの表情がそれを許さない。
「何で、そんなこと言うの……？」
「思ったことを言っただけです。」
せっかく、想いを伝えようと思ったのに。
トゲのある言葉と今までされたこともなかった冷たい態度に、私は腹が立った。
赤葦くんは何も悪くない。それは分かっている。
分かっているのに、私の気持ちを遠回しに踏みにじられたような気がして、一刻も早くこの場から立ち去りたくなった。
「もう、いい。」
「……っ、Aさ、」
「音駒祭、来てくれてありがとう。呼び出してごめんね。ばいばい。」
偽物の笑顔が作れるほど、私は器用な人間ではなかった。
私を呼びとめる赤葦くんの声が聞こえるが、振り返る余裕もなくて、その場から逃げるように体育館の中へ入る。
劇を始まる前は嬉しそうな顔をしている私を映し出していた鏡なのに、今映っているのはとてつもなく酷い顔をした私だった。
こんな顔、誰にも見せられない。無理だ。
音駒祭中で文化祭モードの校内に行く場所なんて所はなく、必死に笑顔を作る練習をした。
「はは……ひっどい顔。」
気を抜くと涙がこぼれてしまいそうになる。
好きな人に冷たくされることが、こんなにつらいだなんて知らなかった。
色々引き受けたのは自分なのにどれも結局、中途半端でみんなに迷惑かけてばっかり。
私は、一体何をしているのだろう。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 735人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨 - あっあっあっ…ァァァァァ！！黒尾ぉぉぉぉ(´；ω；`)無茶苦茶面白かったです！！！ (2019年5月12日 21時) (
レス) id: cd5b3b3e38 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - 赤葦ぃぃぃさん» 赤葦ぃぃぃさんコメントありがとうございま！可愛いと言ってくださって嬉しいです……！励みになります！ (2018年10月1日 21時) (レス) id: 91c2879456 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - みゆみゆさん» みゆみゆさんコメントありがとうございます。返信遅くなってしまい、申し訳ないです。ヤンデレ葦可愛いですよね！作者の大好物です。応援ありがとうございます！ (2018年10月1日 21時) (レス) id: 91c2879456 (このIDを非表示/違反報告)
赤葦ぃぃぃ - やだあかーしかぁいい(悶え中)ぐぅう可愛い……！更新頑張ってください続き待ってます！ (2018年9月30日 17時) (レス) id: a076412724 (このIDを非表示/違反報告)
みゆみゆ(プロフ) - えっ、どうしよう…可愛い…(ヤンデレ赤葦を可愛いと言ってしまう重症者) 番外編の続き、お待ちしてます！ おもしろかったです(*´`*) 応援してますからね〜|壁|´`) (2018年8月9日 22時) (レス) id: 3935b1d5f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：一 | 作者ホームページ：https://twitter.com/ninoma_e
作成日時：2018年7月21日 20時
