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物語は終盤へと差し掛かかった。
魔女からのりんごをかじってしまった白雪姫は目を覚まさなくなってしまい、小人さんたちによって棺桶に入れられる。
私は徹が棺桶を開けるまで目をつぶって待つだけだ。

……上演20分前。
王子様から白雪姫へのキスは、フリだけでいいと演劇部の部長さんに言われた。
これを聞いた時、内心凄くホッとした。
いくら、従兄弟と言えどもキスは流石にお互い困る。
そんな事を考えていると、白馬に乗った王子様……ならぬ徹が優雅に登場する。
キャーーという、黄色い声に目を開けていなくとも徹が舞台に出て来たことは分かった。

「やぁ、小人達。こんなところでどうしたんだ?……これは美しいお嬢さんだ。眠っているのか?」
「王子様、どうか聞いてください。この美しいお嬢さん……白雪姫は、魔女の毒林檎を食べて死んでしまっているのです……」
「それは本当か?ああ、可哀想に……」

ギギ……という鈍い音と共に、私の入ってる棺桶が徹によって開けられる。
徹の骨張った大きな手が私の頰にゆっくりと触れる。
体育館は静まり返っていた。
数秒の間に、徹に見つめられているような気がして、薄っすら目を開けると徹の瞳と目があった。

……何だか、余裕の無さそうな顔に見える。
そんな時、また徹の顔が近付いてきて思わずぎゅっと目を閉じた。
徹との距離、僅か数ミリ。

「……もう無理……我慢出来ない。」

突然、耳に囁かれた声に驚いて、目を見開くが既に遅く、唇にはほのかな暖かさが伝わってきた。
徹に口付けされた。
まるで、永遠の眠りから覚まさせようとしているような。
優しくて……そっと、触れるだけのキス。

「Aの事が、ずっと、ずっと前から好きだった。」

小さいがハッキリと耳に入ってきたその言葉に、頭が真っ白になる。
これは、徹が王子様としてではなく、私も白雪姫としてでも無い、徹からAへの告白だった。
冗談を言える雰囲気でもなく、徹の切羽詰まった表情を見れば、これは真剣そのものだと言うことは、バカな私でも分かった。
衝撃的な告白に体が固まってしまって、動けない。
そんな時、客席から聞こえてくる黄色い大きな悲鳴にはっ、と我に返った。
次のセリフ、言わなきゃ。

「……んん……私今まで何して……」
「し、白雪姫が生き返った……!」
「良かった!王子様のキスで、毒林檎の呪いが解けたんだ!」





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設定タグ:ハイキュー , 赤葦京治 , ヤンデレ   
作品ジャンル:アニメ
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- あっあっあっ…ァァァァァ!!黒尾ぉぉぉぉ(´;ω;`)無茶苦茶面白かったです!!! (2019年5月12日 21時) (レス) id: cd5b3b3e38 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 赤葦ぃぃぃさん» 赤葦ぃぃぃさんコメントありがとうございま!可愛いと言ってくださって嬉しいです……!励みになります! (2018年10月1日 21時) (レス) id: 91c2879456 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - みゆみゆさん» みゆみゆさんコメントありがとうございます。返信遅くなってしまい、申し訳ないです。ヤンデレ葦可愛いですよね!作者の大好物です。応援ありがとうございます! (2018年10月1日 21時) (レス) id: 91c2879456 (このIDを非表示/違反報告)
赤葦ぃぃぃ - やだあかーしかぁいい(悶え中)ぐぅう可愛い……!更新頑張ってください続き待ってます! (2018年9月30日 17時) (レス) id: a076412724 (このIDを非表示/違反報告)
みゆみゆ(プロフ) - えっ、どうしよう…可愛い…(ヤンデレ赤葦を可愛いと言ってしまう重症者) 番外編の続き、お待ちしてます! おもしろかったです(*´`*) 応援してますからね〜|壁|´`) (2018年8月9日 22時) (レス) id: 3935b1d5f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:https://twitter.com/ninoma_e  
作成日時:2018年7月21日 20時

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