お嬢さん、背後には要注意。【宮侑】

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駅前に着くと、やっと下ろしてもらえて。地に足がついたと思えば、今度は指を絡ませて、恋人繋ぎをされた。

電車に乗り、お互いに会話がない時間が続く。気付けば、あと一駅で私の最寄駅だった。

侑によって手は固く繋がれているのに、お互い話さないだけでこんなにも心の距離を感じるんだ。

勝手に治くんとカフェに行ったこと怒ってる？今日は家に泊まっていくの？電話出れなくて、ごめんね。

聞きたいことや言いたいことがたくさんあるのに、声が出ない。

でも、このまま最寄駅に着いて、そのまま侑が帰っちゃったら？私はきっと後悔する。勇気を振り絞って、私は喉から声を捻り出した。

「侑、」
「喋らんといて。」

冷たく突き返される。予想外の反応だった。

侑なら、私が話しかければ笑顔でこっちを向いてくれると思ってた。勝手に期待をしていたのだ。

やっぱり、治くんとカフェに行ったことに怒ってる？
侑に悪いことをしたのは分かってるけど、うまく断れなかったのだ。

些細なことが原因で喧嘩をして、別れるカップルなんてザラにいる。もし嫌われていたら……？

それなら何で、侑は私の手を繋いでくれているの。

彼女なのに知らないことばっかりだ。前よりもっと侑が分からなくなっていって、涙がこみ上げる。侑に嫌われるのが何よりも怖い。でも、ここで泣いたら面倒くさい女だと思われちゃう。

繋いでいない方の手で溜まった涙を拭うと、それに気付いた侑は慌てた顔をして。

「あああ、泣かせたいわけちゃうねん。今の俺、子供っぽい行動しか取れん気がするから……ほら、降りるで。」

最寄駅に着いたアナウンスが流れる。侑は私の腕を強引に引っ張って、電車から降りた。侑が一緒に来てくれたことに驚いて、でもすごく嬉しくて胸がきゅ、となる。





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