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その日は、何の変哲もない日だった。
都内の大学生にしては珍しい一軒家の鍵を探そうと、バッグの中を漁っていると、後ろから誰かに片腕を引かれた。身体が後ろに傾く。
誰だろう。考える隙もなく、私を掴んでいる反対側の腕で身体ごと抱き寄せられた。男モノの香水の匂いがふわりと香ってきて、心臓の音が早くなっていくのを感じる。
「っ……、」
口を布で抑えられていたから、声は出なかったと思う。男に引き寄せられた瞬間、ナイフか何か刃物のようなもので腹を刺された。血が、どくどくと体外に流れ出て行くのを感じる。振り返ろうにも、体が鉛のように重くなってしまって、思うように動かせない。
このまま死ぬのだろうか。
特別生きたいという気持ちは無かったけれど、まだ19歳だし死にたくないというのが本音だった。しかも、通り魔に殺されるとか。
だんだん遠のいていく意識の中で、ぼんやりとそんなことを考えていた。
目が覚めると、病院にいた。点滴に繋がれている自分の腕を見て、どうやら一命は取り留められたようだった。純粋に良かった、そう思った。
誰が病院に連れてきてくれたのだろう。通り魔は捕まったのだろうか。腹の傷は痛むが、動けないほどではなかった。私を助けてくれた人を探すために体を起こすと、ベッドの脇で寝ている金髪が目に入った。
まさか。この人が私を助けてくれたのか。
金髪の男はラフな格好に身を包んでいて、耳にはゴツめのピアス。すーっ、すーっと可愛らしい寝息をたてて寝ている。どう見積もっても高校生か大学生で、かなりチャラそうに見える。仮にこの人が、私を助けてくれたのだとすると根は優しい人なのかもしれない。
金髪の男を凝視していると、ピクリと頭が動く。
さっきまで寝ていて状況が未だ掴めていない私としては早く話したい気持ちもあるが、何て話せばいいのか分からない。起きて欲しくないという気持ちもある。私の意志には関係なく、金髪の彼はむくりと起き上がった。
「ん……よう寝たわ。アンタ腹の傷は大丈夫かいな。」
ふわぁ、と欠伸をしながら金髪の男に尋ねられた。
目を瞑っていたから分からなかったけどこの男、超イケメンだ。お腹の傷のことを心配してくれるあたり、私を助けてくれた人はこの人で間違いないのだろう。
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水彩campus - めちゃくちゃ良い作品です!!!侑かっこよすぎ……(ニヤニヤ)更新頑張って下さい!!待ってます(*^^*) (2020年11月29日 3時) (レス) id: d614036431 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - チャイさん» チャイさんありがとうございます。色気ムンムンの宮侑目指して今後も頑張ります……! (2018年11月26日 22時) (レス) id: ca6dbfc4b7 (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 色気に溢れた作品ですね……最高です (2018年11月25日 14時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - manaさん» manaさんありがとうございます!楽しんでいただけて何よりです!更新がんばりたいと思います……!! (2018年11月17日 17時) (レス) id: ca6dbfc4b7 (このIDを非表示/違反報告)
mana - とってもいい作品ですね!これからも応援してます!!!!!!!!!! (2018年11月16日 20時) (レス) id: a616d0f8f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ninoma_e
作成日時:2018年11月10日 17時