ためいきo01 ページ30
暗闇に慣れた目で、ぼんやりと部屋を見渡す。
こぢんまりとした古いステレオとヘッドフォン、いつからそこにあるのか忘れてしまった何冊かの雑誌、掛けられたスーツ。
寒さに震えるような秒針の音。
和の髪越しに見える、いつもどおりの光景に喉の奥がきゅっと詰まる。
「バトンタッチね。」バタバタと2階に上がった俺に、相葉ちゃんが言った。
通勤途中のバスの中から送ったらしいメールに、「和ちゃんが少し疲れてるみたい。できるだけ早く帰って来て。」とあって、あぁ。まただ。と朝、溜息をついた。
このところ食欲もあって、顔色も良くて、学校も順調そうで、よく笑っていて。
正直、大丈夫だって一人で安心してた。
雷の季節も終わったし、空が突然狂ったように大雨を降らせることもない。穏やかに大気から熱が消えていく経過を、和がだんだんと落ち着きを取り戻していく過程と重ねて思い違いしていただけなのか。
目の前の仕事を片っ端からやっつけながら、考えてた。
必要とされたいといつも請うように願っているのに、いざその時が来たって、和からはっきりとした求めがないと気付けない。
何年一緒に住んでんだよ…
何年和を見てきたんだって。
今の俺の気持ちをあるがまま表したら、おそらく後悔より嫉妬の方が濃いんだろうと思った。
全部を独占したい。
和が求めるものは、俺が全て与えてやる。
気持ちだけが空回りして、仕事仕事仕事で落ち着いて傍にいることもできず、現実はままならないのに、それでも誰にも渡したくはない。
相葉ちゃんにそんなつもりはさらさらないんだとわかってはいても、消えることなく燻り続けるこの気持ちは、やっぱり嫉妬以外の何者でもない。
いつの間にか黒くスクリーンセイバーに切り替わったPC画面に映る苦り切った自分の顔がどうにもブサイクで、項垂れながら今日何度目かわからない溜息をついた。
．
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革ベルト
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にの＊にの - ずっと前からこのお話が大好きです。久しぶりに最初から一気読みしました。どこか切なくて心が温まりました。ゆっくりでもいいので、お話が進んで、5人が少しずつでも歩き出してくれることを願っています。 (2014年7月13日 20時) (
レス) id: 145daf408b (このIDを非表示/違反報告)
エミーノ(プロフ) - 新しい世界に進むとき、誰でも期待と不安を感じると思いますが、かずちゃんは不安を感じてしまう自分に疲れてしまうのかもしれませんね。久しぶりに一気読みしました。このお話が大好きです。 (2014年6月16日 12時) (レス) id: 5d196cc343 (このIDを非表示/違反報告)
二依(プロフ) - SKさん» はじめまして。コメありがとうございます(^-^)季節に何度も置いてけぼりをくらうくらい更新が遅いですが、気長に待って頂けるとほんとに有難いです(^^;; (2014年2月16日 16時) (レス) id: e195381670 (このIDを非表示/違反報告)
SK - このお話大好きです、これから５人の関係性がどうなるのか気になります。これからも二依さんのペースで、ゆっくり更新たのしみにしてますね (2014年2月14日 1時) (レス) id: 713436266c (このIDを非表示/違反報告)
二依(プロフ) - かなさむさん» くふくふ笑ながら。否にやにやかもw…書きました。演技派2人のいたずらのクオリティー（笑）途中で気付く大野さんも流石でしょ！と褒めておきますw (2014年1月31日 10時) (レス) id: e195381670 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：二依
作成日時：2013年8月22日 0時
