【大冒険】メンバーを僻地に配置！帰宅させるな！ ページ15
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と「うわ、これヤバいじゃん」
目隠しを取るなり、としみつくんは頭を抱えた。
ある程度そのリアクションをカメラに収め、てっちゃんからの電話を切ったところでようやく彼は気温を知る。
と「寒！！」
そう、ヤバすぎる寒さだ。なんてったって山奥にもほどがある山奥だから。
と「待って？俺、浅谷さんがカメラマンだから絶対大丈夫めなとこだと思ってたのに」
『本当は高岡さんが来る予定だったんだけどね。ご家庭の都合で急遽』
多分めっちゃ寒いよ！とりょうくんやざわくんに着させられたダウンや貼るカイロのおかげで凌げてはいるけれど、寒いものは寒い。
『頑張ろう。私、山で凍え死ぬ往生は想定してないから』
と「そんなん俺もだよ」
数台通った車のナンバーを基準に、彼は街と逆方向に歩みを進めた。
ああ、逆だよ……と思いつつ、カメラを持ってその背を追う。最悪の場合は電話をかけろと言われているけれど、正直もう最悪の場合な気がした。
ただ、としみつくんと居ると「まあ、一晩くらいなら死なないかな」なんて気分になるから不思議だ。前までは私が守らなきゃ！くらいに思っていたのに。
頼り癖というのは恐ろしい。そう思って見つめていた彼の背中が、急に慌てて私の方を振り向いた。
と「寒くない？大丈夫？」
『大丈夫だよ。それよりここ、どこか分かってる？』
と「うん。さっき看板見て、新城ってことだけは分かった」
あ、そこまで分かってるんだ。それならまあ、少しは安心だ。
とはいえ私は何も口出し出来ないから、微笑むだけにして会話は終わった。
寒いからだろうか。それとも、あまりに静かすぎるからだろうか。最近はOLみたいだと称される会話もあまり弾まない。
『…………田舎だね』
と「田舎だね」
夜の山は怖い。意外と田舎の岡崎で育ったとしみつくんは、多分痛感しているはずだ。
素人が来ていい場所じゃない。だからこそ、少し気を張ってるようだった。
山際から聞こえてくるガサゴソとした野生動物の音に体を固めつつ、私は少しとしみつくんに寄る。
と「ん？」
『寒くもないし、暗いとこ苦手とかは特にないんだけど』
と「うん」
柔らかな相槌に絆され、ゆるりと口を開いた。
『もし突然動物が出てきたらカメラ気にせんと逃げちゃうかもしれん』
と「それは俺も逃げるよ？」
としみつくんが笑うと、吐息で視界が白くなる。
『だよね』
なんだか、世界に取り残されてしまったかのような気分だった。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月30日 21時
