Idol 2 (ページ6)

今日:88 hit、昨日:98 hit、合計:16,038 hit

・ページ6

・

数分後。全速力で降りて来たとしみつくんが、謝りながら一目散に自分の車に向かってくものだから、私は慌てて止めた。

『待って！私が送るから』

と「いやさすがに申し訳な、」

『てっちゃんに電話する時間、勿体無いでしょ』

強めに言うと、しょんぼりして乗り込んでくる。

『じゃ、発進しまーす』

と「お願いします」

電話をかける姿をバックミラー越しに確認しつつ、私は暫く道をひた走った。

と「………っ、はー」

『怒ってた？』

と「そりゃ、うん。怒るよね」

『当然だねぇ』

電話口ではテンションが高かった彼は、電話を切った途端目に見えて落ち込んだ。頭を抱え、下を向いてしまっている。

と「ごめん。浅谷さんにまで迷惑かけた」

ここで私が説教をしてしまうと、後のドッキリが意味を成さなくなるだろうと思い、わざと微笑んでみせる。

『大丈夫だよ。暇してたもん』

そこからはいつも通りだ。としみつくんは私に話しかけることも無く、台本のようなものを読み込む。一方私は運転に専念する。

居たなぁ、こういう後輩。ライブ当日の朝にやらかして、あからさまにテンションが下がっちゃう子。

そういう子は反省はしているし、名目上のお説教で済ませるのがベストのはずだけど。ブチギレなんかかまして、大丈夫かな。

少し心配だ。まあ、高岡さんのお説教だろうし、ちゃんとしたものだろうけど。

…………なんて思いを巡らせてから、ハッとした。いやいや、なに私が心配してんの。

としみつくんもいい大人だ。なんなら就職していたんだから、てっちゃん達なんかよりよっぽど。

そんな人を心配するなんて偉そうにも程がある。

ただ、どうしても。

もう一度、バックミラーを見る。としみつくんはブツブツ唇を動かし、何かを覚えようとしているみたいだった。

心配なんだよなぁ。

これがてっちゃんやしばゆー、ざわくんなら、心配というよりお節介をかけていた。お説教でムクれるのは確実だし。

もしりょうくんやゆめまるくんでも、心配はしなかった。ちゃんと切り替えられるのは分かってる。

ただ、としみつくんは。

『……弟、』

と「ん？」

『ううん』

澄んだ瞳と鏡越しに目が合った。

なんだかいつも視線を逸らすし、すぐ照れるし。まるで反抗期？のような。

そんなとしみつくんを私はどうやら、勝手に弟のように思っていたらしい。

心の中に暫くあったモヤモヤが言語化され、私はスッキリした気持ちでドライブを楽しんだ。