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り「で？」
『ん？』
2日目の朝。なんだかんだ睡眠が取れていない皆に休みを言い渡したりょうくんは、私を手招きし、外へ出た。
着いて行き、どうしたのと声をかけるとすぐさまコレだ。訳が分からない。
り「こっちこそだよ。どうしたの？」
『なにが？』
眠そうな目をした彼は、すぐベンチに腰かける。そしてだらりとした姿勢で、私の目を見た。
り「としみつと、喧嘩でもした？」
『えっ。なんで分かったの』
あ、いや喧嘩では無いけど。慌てて否定すると、ニヤニヤ笑いが加速した。
り「最近ほとんど喋ってないし。Aから話しかけても、会話弾んでないし……ってのは元からだけど」
物凄い観察眼だ。気まずくなったのはつい最近。バレる余地も無いと思ったけれど。
『ちょっと……うーん。失望された？』
り「え？としみつに？」
目を見開く彼に頷くと、首を捻られた。
り「だらしないとこ？」
『違う』
り「あぁ。寝癖酷いとか」
『違う』
り「服がダサい」
『ねぇ、言いたいこと言うタイムじゃないからね？』
ケラケラ笑っているりょうくんは、もう全く眠そうに見えなかった。
と「じゃあどこに」
『…………』
暫く迷ってから、私は小さく口を開いた。
『分かんないんだよね』
り「なんで失望したのか？」
『うん』
事情を広める訳にもいかないし、言葉を選びつつ紡ぐ。
『としみつくんが言うには、なんでそんな頼ってくれんの？みたいな……あと、なんでそんな謝んの？みたいな。そういう感じのとこで失望してるっぽかったんだけど』
り「うん」
『だって……ねぇ。としみつくんって弟みたいな感じじゃん。頼るのはちょっと違うし……それに、謝ったのだってホントに申し訳なかったからだし』
りょうくんはこういう相談をしやすい。というのも、話を汲み取る能力が高いから。
今日もそうだ。今の数分で、きっと全て悟ったんだろう。もうその唇には笑みが浮かんでいた。
り「なるほどね。それ、としみつに言ったでしょ」
『え、うん』
謝らないでという一言がどうしても刺さって、私はあの後、直接彼に言った。
なんで謝られたくないの。申し訳無いから謝ってるんだけど、って。
り「で、としみつは「もういいよ」って言ったでしょ」
『りょうくんって副業でエスパーでもやってる？』
怖い。もはや目の前の男が怖くなってきた。
私の気持ちを知ってか知らずか、りょうくんは笑顔のままだった。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
