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と「ごめん！俺、てつやがポケットの中にカードケース見つけて、浅谷さんに届けに行くって言うから……トイレ行きたくて着いて来て」
『謝らんで。ごめんね、変なとこ見せちゃって』
と「いや俺は大丈夫だから……てつや、どうする？皆に伝えとく？先帰ったって」
て「あー……そうしてもらえると助かる。このまま実家連れてくわ。ごめんけどよろしく」
と「うん」
ああ、せめて居合わせたのがしばゆーだったら、まだウチの惨状を知っている分、ショックも少なかっただろうに。
何も知らないとしみつくんに、人間の醜い部分を見せてしまった罪悪感が募る。
『ごめんね』
首を振るとしみつくんの瞳から今にも涙が落ちてきそうで、思わず笑みが溢れた。
『泣かないで』
と「泣いてないよ。……じゃあ俺、戻るから」
て「トイレ良いの？」
と「大丈夫」
て「立ちションしないでよ？」
と「そこまで膀胱弱くねぇわ！」
小走りで駆けて行った彼を見送り、てっちゃんは溜息を漏らした。
て「謝るなら俺やんね」
『え？』
て「すばるくんに約束させられたのに。泣かせんって」
『泣いてないからセーフじゃない？』
て「何言ってんの。自分の今の顔、分かってる？ボロ泣きだよ？」
『うそ』
言われて頬を触ってみれば確かに、びしょびしょだった。
『そりゃとしみつくんもドン引きだよね』
て「としみつには言ってないでしょ？」
『うん、しばゆーだけ』
て「近いうちに言った方がいいね」
『……うん』
なんだかしばゆーに打ち明けた時より申し訳無さが大きいのは、私がとしみつくんを弟みたいに思ってしまっているからだろうか。
なんだか、あんなに繊細な人に私の業を背負わせてしまっていいものかという罪悪感が物凄い。
て「それと、もう1人で歩かんようにしよ」
『……うん』
て「まさか今更修さんが出てくるとは思ってもなかったけど」
『テレビで見たんだって。私の事。それでお金があると思って、手篭めにしに来たみたい』
て「あぁ……この前のか。復活ってので取り上げられてたもんね」
元々、昼夜逆転している人だから私が唯一映っていた朝のワイドショーは見ていなかったんだろう。
だから今までアイドルなんて知らなくて、でもこの前のはちょっと話題になってしまったから初めて知って。それで。
『…………すっかり、縁切れたと思ってたのに』
やっぱり幸せは続かないな。そう、実感した。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
