Idol 2 (ページ41)

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しかし父は死んでいる。これは紛れもない事実だ。だからきっと目の前の男は。

『おさむ、さん……』

「なんちゅう顔するんや。久しぶりに愛しのおじさんの顔見て、そんな眉寄せるこたぁ無ぇがや」

誰が愛しのおじさんだ。そう思うのに、何も言えない。

それはきっと、この男が紛れもなくあの父親の兄だからだ。

浅谷修。唯一残る、私の親戚。

もう二度と関わらないと思っていた。

私がアイドルを始める少し前。一番ウチが苦しかった時に、父親が金を無心して、そして私達に絶交を言い渡した伯父。

きっと似たもの同士の同族嫌いだろうとお兄ちゃんが言うくらい、この兄弟は金銭関係で憎みあっていた。

だからこそ、父の訃報も知らせなかった。

もう二度と関わりたくなかったから。

父の次は伯父に搾取されるなんて、耐えられないから。

「テレビで見た時ぁ、もうちっとマシな格好してたのに。足くらい出さんでどうするっちゅうだ」

手首に触れていた掌が、ヌッと腰に移った。そのまま固い掌は太腿まで降りていく。

その間、私は一言も発することが出来ない。

文句を言えば、殴られる。蹴られる。胃の中の物が無くなるまで、吐かされる。

暫く私の体をまさぐって満足したのか、男は私に顔を寄せた。

汚い顔だ。酒で顔色が真っ黒になって、タバコで歯茎もボロボロになって。白目は黄色いし、毛穴が開きっぱなしだ。

何より、その全面に私への執着が見えるのが汚らしくてたまらなかった。

「金は」

物を発さない私を無視して、男はてっちゃんのカバンを漁った。ごめん、てっちゃん。こんなのにカバン触られちゃった。

しかし運良く、男はてっちゃんのカードケースには気付かず、財布だけを見て声を荒らげた。

「なんだぁ、金持っとらんのか。……おい！どこに貯めとる！」

パチンと頬を打たれ、私は弾かれたように顔を上げた。

『お金、持ってません』

「優しぃしとったら嘘つくか、こんのクソアマ！！あんだけ俺に世話になっといて！」

一言発するだけで、喉が焼けるように痛い。

『ホントです』

「なら、お前のこと養っとる男の金でもいい。渡せ！」

てっちゃんのことを悟られたくなくて、私は首を振る。

『私、養われてないです。ひとりです』

「どうせあの幼馴染の男だろ？！俺も会ったことのある」

やめてよ、なんで。てっちゃんはもう巻き込まないで。ただでさえ私は小栁津家に迷惑しか。

首を振ると、ぎゅうと片手で首を絞められた。