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ゆ「え！？Aちゃんってそういうの一番嫌いじゃん」
『ま、色々事情があるの』
り「その甥っ子くん、クリスマスイブ当日に手術なんだって」
いつもなら断っていた。でも、はじめしゃちょーが泣きそうになりながら頼んでいたのと、なにより。
り「心臓弁膜症？って病気の」
てっちゃんが目を細めた。しばゆーがそろりと私を上目遣いで見る。
そう。お兄ちゃんと同じ病気だ。
り「サンタさんになるんだよね、A」
『あんまりキャラじゃないし、そんな言い方せんでよ』
ファンを特別扱いすることだけは、昔からしなかった。目に見えているものだけが真実じゃないことは知っていたから。
でも、お兄ちゃんと同じ病と聞いてしまうと。どうしても。
し「その子、大丈夫なの？手術って」
『大丈夫。滅多なことが無い限り、若い子なら復活する病気だから』
て「あれだよね。悪いことが重なりでもせん限り、普通に人工弁で上手く生活できるっていう」
ゆ「詳しいね」
て「うん」
そりゃあそうだろう。悪いことが重なる瞬間を、隣で見てたんだから。
『ってことで、私はクリスマス予定ありでーす』
思い出を心にしまって、私は努めて明るい声を出した。
り「まあ言ってもお昼から夕方でしょ？」
『うん。術前と術後に顔見せるつもり』
て「えー……でもその手術、」
『静岡』
て「でしょ？ってなったらホテル……いやまあ間に合うか」
『嫌だよ。手術頑張った子にバイバイしたあと、16万のホテル行くのは嫌。気持ち的に嫌』
ゆ「なんかその話聞いたら申し訳ないわ」
胸に手を当てるゆめまるくんが迫真すぎて思わず笑う。
『人を幸せにする職業やってた身として、幸せを横目に頑張ってる子を無視出来んかっただけだから。皆は気にせんで楽しんで』
虫「…………」
て「え！？」
り「怖い怖い、なんで泣いてんの(笑) 」
え、泣いてる？カメラを向けると、本当にざわくんは目を拭っていた。
虫「いやもう、僕のことはいいから」
り「怖い怖い。なに？(笑) 」
虫「……やっぱりさやりんは最高のアイドルだなって」
深い溜息の後、ざわくんは深く頭を下げた。
り「気持ち悪いなぁ」
虫「気持ち悪くてもいいよ。もう昔の僕が救われたわ、今ので」
お兄ちゃんを救えなかったから、私欲で懺悔したいだけかもしれないけど。少なくともざわくんの救いになったなら良かったかな。
真冬だと言うのに、なんだか部屋の温度が暖かくなった気がした。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2023年10月6日 3時
