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し「そんなただの高校の同級生の俺らが東海オンエアになって、就活で皆が離れてく中で、俺ら3人だけはずっとバカやってた」
俺も、としみつも、ゆめまるも、虫さんも。誰も知らない、この3人だけの思い出が沢山あることも、それが3人にとって少なからず尊いものになっていることも、俺らは悟っている。
し「先の見えない日々の中で、何も気にせずバカやれてたあの時期が、間違いなく俺らの青春だったと思います」
Aが震えるような笑顔で頷く。
し「今となっては、僕も、2人も、色んなものに縛り付けられるようになっていますが、それでも、僕らの根底はあの頃と何も変わってないはずです」
てつやが気まずそうな笑顔で俯く。
し「結婚おめでとう。どうか、日本で、いや、世界で……いや、宇宙で一番最高なバカをやる夫婦になってください。2022年6月17日。東海オンエア しばゆー」
そしてそう締めくくったしばゆーも、泣きそうな笑顔を浮かべていた。
て「なんなん……ここだけ本気やん」
『あー、ビックリした。ちょっと泣きそうになったじゃん』
し「そこは泣けよ」
『余興の余韻でギリギリで耐えちゃった(笑) 』
そう言うAの目が潤んでいるのを、俺は知っている。
けど、強がりに免じて今だけはカメラを向けないでおいてあげよう。
てつやとしばゆーとAの繊細な友情に迂闊に触れたくないから。
「さて、ここで本来ならばケーキ入刀、乾杯の音頭、新郎新婦中座と続くのですが、こちらはまどろっこしいということで全カットをする事になりました」
うおお！と腹の減った男たちから雄叫びが上がる。
さすがパーティー慣れしているとしみつが居るだけあって、披露宴組の進行はつつがない。
「ということで、皆さん。小一時間程度、ご歓談をお楽しみくださいませ」
司会者の合図を皮切りに、同級生たちは皆、ビュッフェに群がっていった。
り「どう？楽しめてる？」
『楽しいよ！りょうもカメラ置いて、食べてきなよ』
り「いや、食べ物よりこっちのが魅力的だから」
て「うわ、出た」
り「なに、出たって(笑) 」
画角に2人を収めて、画面越しに見ると、なんだか修学旅行の記念映像でも見ている気分になった。
ト「なんで制服着てんの？」
て「それ、俺らが聞きたいくらいだからね？(笑) 」
代わる代わる訪れる愉快な訪問客を捌く2人は、もう息のあった夫婦漫才師にしか見えない。
そんな中で、ふと、毛色の違う男が一人現れた。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2022年7月10日 4時
