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てつやに歩み寄ったAは、自然と笑顔を浮かべた。

役目を終えた俺は、隅へ寄る。


り「やってくれたね」

ゆ「感動したでしょ?」

り「うん。ありがと」

ゆ「俺もね、感動した」


そう言うゆめまるの目には薄ら膜が張っていた。


り「嘘でしょ?おじいちゃんすぎない?(笑) 」

ゆ「いや、俺はさぁ、ほら、りょうくんとAのこと、昔から見てきてるから」


いい式だよと拍手するゆめまるを笑って、ひっそりと洟を啜る。

式は大詰め、誓いの言葉まで進んでいた。


て「っえー、っと、まずはお忙しい中お越しいただきありがとうございます」

『ありがとうございます』

て「多分ね、ここまで動画界の有名人が一堂に会する機会もなかなかないと思うので、皆さん、僕らのことは放って存分に楽しんでください」


笑いの起きる会場の中、厳格なAの父親も笑みを浮かべているのを見て安心した。


て「えー、僕らはね、恐らく人の言う、普通の生き方をしてません。それでも、今この瞬間、僕らが一番幸せだって分かってます」

『そして多分、今ここにいる皆さんならきっと、私たちが今この瞬間、一番幸せだってことを分かってくれると思います』


パラパラと沸き起こる拍手を見渡して、Aが薄らと微笑む。


『だから、私たちは神様じゃなく皆さんに誓います。ずっとこのまま、この人と一緒に居ると。そして、東海オンエアと一緒に生きていくと』

て「えー、これを持ちまして、誓いの言葉とさせていただきます。2022年 6月17日。小柳津てつや」

『川村A』


ペコリ、と2人が礼をすると割れんばかりの拍手が巻き起こった。

ふと隣を見ると、としゆめが大号泣していて、思わず笑いが零れる。


し「泣きすぎ(笑) 」

ゆ「俺ダメだわ、これ。もう使い物にならないと思っといて」

虫「ゆめまるはもう式終わるからいいけど、披露宴担当オジサンは頑張ってよ?」

と「わかっとるわ!」


感無量の俺らをチラ見して、てつやが爆笑しているのが見えた。


「それでは誓いのキスを」


司会者の言葉の合間を縫い、てつやは俺らを指す。

それに従ってこっちを振り向いたAも、パッと破顔した。


と「俺らはいいから!」


としみつのサイレントな叫びが聞こえたのか否か。

てつやは強引にAの頬を引き寄せた。

俺らを見て笑っていたその顔が、あっという間に見えなくなる。

そしてボルテージ最高潮のYouTuberたちから、ヒューヒューと熱い野次が飛んだ。

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作者名:蚕虫 | 作成日時:2022年7月10日 4時

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