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て「俺はかむと似てるから分かる。感情で動いてるけど、その感情が論理的なんだって」
『勝手に決めつけないでよ』
エレベーターの階数表示をチラ見したてつやは、私を本気で説得しにかかってきた。
て「……どうせ、俺のこと好きだとか勘違いしたのも、としみつがしてくれない事を偶然俺がした時とかでしょ」
『え？』
図星すぎて息が詰まる。確かに、昔なら手を取ってくれていたはずのとしみつが遠くで雪合戦をしていて、少し寂しくて。
その後、てつやの優しさに触れて、私は彼の大切さに気がついた。
て「全部偶然。偶然、ちょっとかむが傷ついてるとこで、偶然俺がちょっとかむに優しくしただけ。だから、」
かむが俺を好きなんて、勘違いなんだって
そう、捨て台詞を残して、てつやはエレベーターから出て行った。
偶然？てつやが、あの時優しかったのは偶然なの？
確かに、今も涙を拭ってくれなかった。
私の嗚咽を待つことなく、畳み掛けてきた。
本当に、そうなんだろうか。
てつやは、本当に優しくなくて。
そして、私にとっての想い人ではないんだろうか。
分からない。もう何も、分からない。
好きって、なんだっけ。
と、その時。
ヌルリと扉が開いて、その奥からりょうが現れた。
り「うお、ビックリした。A？」
『りょう〜〜〜〜……』
り「なに、どうしたの」
廊下の明かりが逆光になって、彼の背後から神の後光が射して見える。
私の泣き顔を見て動揺することも無く、りょうは長い足でエレベーターに踏み込んできた。
り「すーごい泣いてるじゃん。タオルは？」
『持ってる……』
り「なら使いなよ(笑) 」
慣れた様子で(というか実際慣れてるんだけど)カバンからハンカチを取り出し、彼は私の涙を拭う。
り「としみつと喧嘩した？」
『ううん……てつや……』
り「へえ、珍しいね」
目を丸くする彼に、事情をかいつまんで説明するも、途中途中でオーバーなリアクションをされてしまって、全く話が進まない。
り「待って？！告白した話、聞いてないんだけど」
『言うの忘れてた』
り「報連相！」
だって、初めてだったんだ。
自分から人を好きになるのも、溢れる想いを口にするのも。
……いや、てつやの言葉を信じるなら、私は彼のことを好きでもなんでもないのか。
『人生が分かんない』
り「重傷じゃん」
愉快げなりょうと共に外に出ると、タクシーの暗がりの中からカンタが「よっ」と手を挙げた。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2022年6月17日 1時
