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と「だからさぁ……こう、スーッといくんだよ。ここ、傾斜もそんな無いし大丈夫だって」
『う、ん』
て「大丈夫？離すよ？」
心配そうな顔のまま、てつやがゆっくりと手の力を抜いていく。
私も彼に合わせて、スルスルと離れようとするけれど。
『むりぃーー！！てつや！！』
余りにも怖くて、すぐにてつやを呼びつけてしまった。
て「はいはい(笑) 」
ゆ「召使いじゃん」
て「まぁ、そんな予感はしてた。かむは運動のカン悪いとこあるから、初めは手繋ぎのままやった方がいいと思うんだけど」
半泣きでてつやの言葉に頷く私が見えていないのか、としみつは怪訝な顔をした。
と「え、マジで？ほんとに？バンバン滑らせた方が上手くなるんじゃないの？」
ゆ「俺もそっち派」
て「えぇ、そう？……かむ、どーする？」
そんなの、聞かれるまでもない。一択に決まっている。
『ゆっくりで！お願い！！』
と「根性無しめ！」
『うるさい！怖いんだよ！』
て「とりあえず俺、手持っとくからゆっくり滑ってみん」
子供の頃に戻ったみたいだ。
力強い腕に縋りついて、私はジワジワと下っていく。
と「顔は前！下見たらコケるって！」
『こーわい！！』
と「だから前見ろって！」
『怖いって言ってんでしょ！』
ゆ「仲良くしてぇ！！」
一度下まで行くと、てつやがゆっくりと私の身体を下げてくれた。
て「とりあえず片足外して」
『うん』
て「んで、板付いてる方上げてグイーって蹴る感じ」
言われるがままに斜面を登ろうとするも、板が重くてそもそも少ししか上がらない。
て「そんな力無かったっけ？(笑) 」
『ね。私も自分にビックリしてる』
てつやに引っ張ってもらいつつ、私は亀のようにノロノロと斜面を登った。
て「てか、としゆめは？」
てつやがポツンと呟くと、虫さんのコーチをしていたりょうが白い歯を見せた。
り「しばゆーと雪合戦してる」
て「嘘でしょ？(笑) 」
言われてみると、たしかに新雪だらけの隅っこで3人が駆け回っているのが見えた。
どうやら帰ってきそうな雰囲気はない。
まぁ、居ても居なくても私はどうせてつやから教わることになるのは目に見えてるし、いいだろう。
虫さんも同じように考えたらしく、いくとを呼びつけた。
虫「アッチ映して来なよ。コッチは撮れ高無いし」
彼は言われた通り、3人の元へ去って行く。
て「やりますか」
それを見送って、てつやはまた私の手を取った。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2022年6月17日 1時
