Blume 3 (ページ1)

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りょうはサラリーマンでしたページ1

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り「3月に辞めるから、その動画撮らせてもらいたいんだよね」

りょうが私にそう告げたのは、年が明けてすぐのことだった。

彼の実家で、私の家族も含めて新年会をしたその日に、和室で打ち明けられたのを覚えている。

そうか、とうとうこの豊橋と岡崎を行き来する生活も終わるのか、と感慨深かった。

『おつかれさま。頑張ったね』

り「Aのおかげだよ」

『私は何もしてないから』

りょうは凄い。本当に凄い。

私はアルバイトすら経験がない人間だから、何も分からないけれど、きっと仕事をするというのはとてつもなく大変で、そしてとてつもなく厳しいことのはずだ。

それを、東海オンエアと両立させたんだから。

『ホントに尊敬してる。ホントにカッコイイよ』

私の言葉に、りょうは心の底から嬉しそうに笑った。

さっき飲んだお酒が回って、頬はわずかに赤い。

り「Aも彫刻家として二足の草鞋履いててくれたから、俺も頑張れたんだって」

『それは私も。りょうが頑張ってるんだから、私も頑張らないと置いてかれるんだもん』

り「何それ(笑) 」

りょうとはずっと対等で居たい。

りょうが大変な時は、私も共有していたいし、逆もまた然りであってほしい。

そうやって、私たちは今までの人生の山を乗り越えてきたんだから。

『皆には言ったの？』

り「ううん。次の撮影で言う」

『そっか。会社には？』

り「言ってる。皆、応援してくれた」

ありがたいことだよね、と呟くその横顔に、私は心の中でそっと唱える。

りょうが素敵な人だから、りょうが頑張ったから。皆が優しくしてくれるんだよ、って。

でもそれを言ってもりょうは謙遜するに決まってるから、決して口には出さない。

り「これから東海オンエア一本だって」

『ね。楽しみ。スケジュール管理とかしてよ』

り「いいよ。編集も頑張りたいし」

『いつでも教えてあげる』

居間から響く親たちの楽しげな声をアテに、りょうはコップを傾けた。

り「楽しみだなぁ」

柔らかなその表情は、久しぶりに見れるリラックスした顔で、嬉しくなる。

『ホントにお疲れ様！！偉かったね！！！』

り「なにお姉さんぶってんの(笑) 」

後ろからぎゅうと抱きついた私に、彼は白い歯を見せて笑った。

り「これからもよろしくね」

『こちらこそ！！』

固く交した握手の絆は、誰にも破れない。

私たちだけの契りだった。