株式会社グレーゾーン・エージェンシー ページ20
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り「今日もご飯行くの？」
『うん！普段滅多に会えないから』
ゆ「今日は誰？」
『今日はね、カンタ！』
り「明日は？」
『明日はミノ！』
虫「明後日は？」
『明後日はぶんけいくん！』
り「男ばっかじゃん(笑) 」
『たしかにこの3日はそうだね』
他の日は女の子の予定だらけなんだけれど、偶然今日からの3日間は男連中だ。
なんとなくだけれど、りょうはそれを知っていてわざと聞いてきているような気もする。
『ってことで、おつかれー！』
り「おつかれー」
6人に手を振って、私は仮スタジオを出た。
もうしっかり夜も更けている。
忙しいカンタを待たせたくなくて、早足でエレベーターに乗り込んだ。
と、その時。
て「待って。俺も」
閉まりかけの扉に手をかけてきたのは、肩で息を切らしたてつやだった。
つい先日。私の告白を聞いて、気まずそうに視線を彷徨わせた彼は、沈黙の後、目を合わせることなく口を開いた。
て「付き合いたいってこと？」
『うん。うん？わかんない。でも、てつやのこと好きなの』
て「いや、もう分かったって」
困らせている空気を肌で感じて、私も困ってしまった。
思わず口をついて出たから、今更訂正しようもないんだけど。
でも、困らせたかったわけじゃなくて。ただ、好きだって言いたくなっちゃっただけであって。
て「かむがそんな顔することないんだけどね」
まるで全てお見通しかのようにてつやは微笑んだ。
て「けど、一旦考えさせて。普通に衝撃強すぎるし、編集せんとヤバいし」
『うん。わかった』
そうこうしている間に、東京に行くことになって。
ドラマ撮影が始まると、恋愛どころじゃなくて。
というかもはや、2人きりの時間なんて皆無で。
だから、今、ゆっくりと下るエレベーターの中で、私は妙に緊張していた。
『なんか照れる！』
て「……そのことなんだけどさ」
扉が開いて1歩足を踏み出そうとすると、ぐいと腕を掴まれた。
上目遣いで覗き込まれて、不思議に胸が高鳴る。
て「近くでカンタ待たせてんの？」
『うん。前にタクシーつけてくれてるはずだけど』
て「あー、そっか」
彼はさらに腕を引いて私を奥に引っ張りこんでから、閉のボタンをポチリと押した。
『……何事？』
て「2人きりの時間、ないでしょ」
エレベーターはスルスルと最上階まで上っていく。
少し溜息をついて、てつやはボリボリと頭を搔いた。
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作者名：蚕虫 | 作成日時：2022年6月17日 1時
