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『びっっ、、くりした!!!何!??何で入って来てんの?!』
見上げた先には、少し眉を顰めた顔をしたてつやが立っていた。
完全に部屋着姿で、手にはウチの鍵を握りしめている。
私の心臓は驚きのあまり、今にも止まりそうだった。
て「何回言ったら分かる?男の家はヤバいって言ってんじゃん」
そう言いつつ、てつやは私に覆いかぶさってマウスを弄り、ミュートを押す。
間近で見る目の色があまりに綺麗で、ほんの少し見とれてしまった。
惚けた顔の私に、てつやは首を傾げる。
て「りょうにチクるよ?」
『いや、不法侵入の方がヤバいでしょ!』
その言葉にそれもそうかと頷きつつ、彼はチラリとキヨくんのアイコンを見た。
て「ディスコなんて滅多に使わんやん、かむは。また変なやつに騙されて、」
『ホントに勘違い!相手、キヨくんだし!お家も爆速で断られたし!』
キヨくん……?と小さく呟いてから、てつやはハッと息を飲んだ。
ようやく私の通話相手が数少ない私の友人だと分かったらしい。
て「うわ、やったかもしれん」
『やってるよ』
慌ててヘッドセットを付け直し、ミュートを解除する。
『キヨくん?ごめん!ちょっとてつやの勘違いで……ってあれ?』
既に彼は通話を切っていたようだ。チャットに「お気づかいなく」と置き手紙が残されている。
て「いや、だってさぁ。ちょっと用事あって会いに来たら、めちゃくちゃ大声で誰々くんの家行くとか言っとるし、また未遂されるかと思って」
『さすがに2回は無いから!』
というか1回めも、恐らく相手にはその気は無かった。それなのにりょうが無駄に心配して大事にしたのだ。
『ごめんなさいは?』
て「……いや、かむに謝ることではないな」
『それはそう』
てつやがキヨくんに謝罪のチャットを打つ間、私は彼の手から合鍵を奪い取る。
『りょう?』
て「そう。5時間連絡取れんし、明日の動画のデータ持ってるの絶対かむだし、ってのでしょうがなく借りた」
『LINEとかピンポンとかしてくれれば良かったのに』
て「どっちもしましたぁ!」
言われてみてみると、たしかに通知が溜まっていた。
キヨくんとのゲームに熱中するあまり、すっかりスマホを見るのを忘れていたのかもしれない。
『ごめんね』
て「いいんですけどさぁ……なに?恋バナしてなかった?」
………ヤバい、どこから聞いてた?
固まる私を他所に、てつやはパッとキーボードから手を離した。
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作者名:蚕虫 | 作成日時:2022年6月17日 1時