アイの呪い【乙骨憂太】 (ページ7)

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第六話ページ7

　
次にAさんの姿を見たのは、翌日の午後だった。

「頑張ってるね、二人とも」

「Aさん！」

真希さんにコテンパンにされ、地面に倒れ込んだ僕の頭上から顔を出した。
慌てて起きあがろうとした瞬間、おでことおでこがゴチンと打つかる。

「痛っ！」

「ごめん、大丈夫？」

「なんでAさん平気なの……」

「石頭だからね」

額をさすりながら起き上がれば、不安そうに僕の顔を覗き込む。
ほんの数センチ先であのスカイブルーの瞳が輝いている。

「……乙骨君？」

「わっわっごめん！」

吸い込まれるようにして見惚れていた僕は、ハッとして距離をとる。
彼女はまたクスクスと楽しそうに笑った。

Aさんの瞳はまるでネオンサインのようで、一度目を惹きつけられると、瞼を閉じてもその裏にじんわりと滲んで見える。

「剣術か……もう随分とやってないなぁ」

「前はやってたの？」

転がった木刀を拾い上げ、慣れた手つきで弄ぶ。
そして、ちょっとだけね、と言って、まるでアイドルのようなウインクをしてみせた。

この感じはちょっとじゃないんだろうなぁ。

「手合わせする？って言いたいところなんだけど。ちょっと先生に呼ばれててね」

「そっか……いってらっしゃい」

木刀を僕に手渡して立ち上がった。

ふわりと二人の間を風が吹き抜けていく。
揺れる前髪が落とした影の向こう側で、彼女の瞳がきらきらと反射する。

「憂太君も頑張ってね」

「あれ、名前……」

引き止めようとした僕の手をすり抜けて、彼女は校舎へ消えていった。
　
　