56 ページ8
状況に1人ついていけていないと、ふと辺りが恐ろしいほどに静まり返った。
リムルが仮面を外したのだ。封じられていた妖気が溢れ出し、禍々しく辺りを包み込む。
明らかに"ヤバい"妖気に、敵は勿論味方であるこちら側も誰一人として動けなくなっていた。
「──お前らまさか、Aの髪の毛を無残にも切り散らかして……無事で済むとは思ってないだろうな?」
「いやなんで?!?!フルポーションで治るじゃん?!?!」
「………」
少しだけ妖気が引っ込んだ。
でも、リムルは止まらない。先程確認して「これは使い所を考えないとな……」と頭を抱えていたスキル・黒炎を片手で出し始めていた。
今出しているのがリムルの限界では無いと知っている身からしたら、「これ本気出したら不味いよね…」と焼き払われるだろう森林に対して不安が過ぎる。
そしてリムルは、威嚇攻撃として近くの岩に黒炎で攻撃した。うん、やり過ぎである。
え、今何が起こっているの?
「さて、この攻撃を見ても俺とやり合おうとするか?俺にはもう相手をする理由は私怨を除いて無いが、お前達はどうする?」
「生き恥を晒すくらいなら……敵わぬまでも、一矢報いて果ててやる……!」
「お待ちください、お兄様!」
ちょっと待って、私怨って……引き摺りすぎじゃないですかね?!
桃鬼が赤鬼とリムルの間に割って入った。桃鬼曰く、こんなにも強い魔物がわざわざ弱い豚共を使って里を滅ぼそうとするだろうか。1度の攻撃で燃やし尽くせてしまうのに、ということだ。
可愛らしい女の子から"豚共"という単語が聞こえた気がしたけど、聞かなかったことにしよう。
その間に俺はリムルに近付く。何故か暴走気味のリムルを落ち着かせるためである。
「リムル、もう一度言うけど髪の毛は治るから」
「……ああ、悪かった。俺がもう少し警戒をちゃんとしてれば……足首、ごめんな」
「!?……気付いていたの?」
「当たり前だろ」
リムルは俺に向かってフルポーションを投げ付け、そのおかげで足首も髪の毛も元通りになった。
なんだ、リムルが怒っていたのは髪の毛だけじゃなかったんだ。恐らく、不甲斐なさで自分で自分に腹が立ったんだろうけど……
そしてなんとか双方落ち着き、ようやく会話が出来るようになった。
370人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ポッチ(プロフ) - ストーリー、キャラの性格とか全部大好きです‼️無理ない程度で良いので更新再開してくれると嬉しいです。 (6月9日 17時) (レス) @page27 id: bc736021f3 (このIDを非表示/違反報告)
黒椿鬼(プロフ) - とても楽しく読ませていただきました。本当にありがとうございます (2023年4月25日 22時) (レス) id: 45f1efa2ce (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - めちゃくちゃ好きですゥゥゥ!!!更新楽しみにしてます! (2022年9月24日 7時) (レス) @page27 id: 0e13820e35 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (2021年3月20日 13時) (レス) id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり(プロフ) - めっっちゃ好きです!(語彙力)続きを楽しみにしてます! (2020年11月20日 10時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:姫林檎 | 作成日時:2020年9月28日 9時