研究者の思惑 ページ31
「はぁ……。」
「お疲れだなぁ。フィンクス。」
「カイネリアス、君の兄上だろう。もう少し取っつきやすくならないのか。」
「あのお方は神様だぜ？無茶言うなよ。王太子と言えども神に口出しできるほど偉くない。」
カイネリアス・ヴァンロイド・ライオッツェ・シスネリオン王太子の執務室。
近衛騎士であるセシリア・ランフォード以外が出払った場でゆったりとワインを揺する。
隣国に第二王子同士、接する時間はとても長かった。
親友と言っても差し支えないほど仲が良いカイネの兄は世界中が認める神々の柱の中でも最上位に位置するカオスの神子だ。
この国は特に神と近しい存在の者が多く、自由に神降ろしが出来る血筋がある。
王族と少数の女神、聖女と呼ばれる女性達がソレである。
今代は特に女神よりも神子の方が適正が高いようで、女神よりも第一王子の方が制約が強い。
隣国の王子たる俺であっても実際に会えた回数は少ない。
会話をするチャンスなど限るどころか一度たりとてなかった。
今回初めて言葉を交わしてみれば、随分と知的な方だと言う印象を受けた。
宗教にどっぷり囲われた者にしては広い知見と冷静な判断力がある。
「だが、君と兄上は仲がいいそうじゃないか。」
「兄弟としては、な。現人神として一度顕現してしまえば俺でもそう易々と話しかけられない。まあ、その心配をせずともあっちから話しかけてくるから気にしたことないっていうのもあるけどな？」
「弟思いと言うべきなのか？」
「結構気が回る人だぜ。些細な変化に気が付くのがうまい。」
兄の自慢ならいくらでもできます、と言わんばかりにワインのグラスを回した。
傍に控えたセシリアに注がせたワインは随分年代物でイイ物だ。
昔からコイツが選ぶ酒は上質なものばかりだ。
目利きができるのだろうか。
「あの人は酒が好きでな。美味い酒知ってるんだよなぁ。」
「ああ、お前の酒のセンスは兄上からの受け売りだったのか。」
「一応これでも学んでるんだが、あの人は別格さ。執念ってもんが違う。」
芳醇な香りがするワインは決して味だけを主張しない上品さがある。
時と場を選ぶ薄口のワインだが、ゆったりと香りを楽しむ今にはぴったりだろう。
「ふむ、今度酒を差し入れるか。」
「口説き落とす気？」
「手土産なしに国へは帰れん。」
所詮断られることが見えた見合い話。
せいぜい得られるだけの情報をもぎ取って休暇気分に過ごすとするか。
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午睡(プロフ) - crankyさん» ご感想ありがとうございます！頑張って更新してまいりたいと思います！ (2019年8月20日 21時) (
レス) id: c737663614 (このIDを非表示/違反報告)
cranky(プロフ) - めっちゃ大好きな作品です！(*'ω'*)更新楽しみにしてます！ (2019年8月20日 20時) (レス) id: c56a3e73e6 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - 由亞-ゆあ-さん» ご感想ありがとうございます！更新の励みになります…！ (2019年8月19日 17時) (レス) id: c737663614 (このIDを非表示/違反報告)
由亞-ゆあ-(プロフ) - 年下×年上の .. ﾄﾞｽﾄﾗｲｸです .. * 2人が、繋がるのが待ち遠しいです♪これからも更新頑張って下さい！ (2019年7月22日 17時) (レス) id: 5570d39ba6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午睡 | 作成日時：2019年4月6日 18時
