遊び人と酒場の店主と若造騎士I ページ37
カイネリアス・ヴァンロイド・ライオッツェ・シスネリオン、なんて長い名前に生まれた俺が長いこと探し続けていた人が何気なく現れた日。
愛も人も心も知らなかった無情で豪胆で残忍な「聖人」の彼はいつのまにか優しさを知ったようで。
久々に見た顔は最近知り合ったアルマへ向ける小っ恥ずかしい感情ばかり浮かばせている。
「現人神」の彼が「人間」になってしまったことを教会の連中は嘆くだろうか。
いなくなった「現人神」がダウンタウンで酒場をしていると聞いたら穢されたと怒り狂うだろうか。
ま、俺にはどちらだっていいや。
やっと「お兄様」が安心して暮らせる世界が見つかったなら、なんだってさ。
「ギルはずっとダウンタウンにいるつもり？」
「できればナァ。無理ソ？」
「さぁね。じじい共は母さんと父さんに睨まれたくないから割と大人しくしてるけど、時間の問題かな。」
お手洗いに行ってしまったアルマが居ない隙に、身内話をしてしまう。
本当はこの人も家に戻らなきゃならないことを理解している。
ぶっちゃけ戻ってきてほしくない。
せっかく手に入れた人間としての生活を手放してまで他人の幸せを願う義務など、誰にもないのだから。
「ナァ、カイネ。」
「んー？」
昔は光すらも入れなかった黒い瞳が窓から差し込んだ陽を受け入れる。
暖かさを知らなかった冷たい拳がやんわりと緩い熱を持つ。
この人が今を暖かく行きて行けるだけで、俺にとっては「償い」が出来ている気がして。
自己満足だと知りながらも俺が人間として生きられる理由をくれたこの人が暖かい世界を手に入れる瞬間を願わずには居られない。
「イヤなら、代わってもいいんだゼ？」
「…何言ってんのさ。せっかくいい人見つけたのに。手放さなきゃいけなくなっちゃうよ。」
「家族には替えられないダロー？」
なんてことないように暖かい言葉を言えるようになった優しいこの人を俺はもう一度苦しめたくない。
でも、この人がしたいことがわかってしまって自然と苦々しく笑った。
「無くなった出来事を、もう一度やり直す気？」
「それが俺とアルマが二人で生きる上で最善だと考えただけダァ。」
カランッと氷が溶けてアイスコーヒーに沈んでいく。
やかましいジジイ共も黙って法的に一緒になれて家族も反対しない方法。
お互いに目線を合わせて頷き合ったところでアルマが戻ってきた。
冷え切った空気を怪訝そうにしながらも、俺もギルも何も言わなかった。
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午睡(プロフ) - 空弥さん» ご感想ありがとうございます！早めの更新を心掛けて頑張ります！ (2019年2月26日 19時) (
レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - ナッツさん» ご感想ありがとうございます！とっても励みになります…！ (2019年2月26日 19時) (レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 絡みがすごく可愛らしくて好みです……！作者様のペースで更新頑張ってください、応援してます (2019年2月24日 13時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - 好きです!!!最高です！続きめっちゃ気になります！更新楽しみにしてます!!!!!!! (2019年2月24日 3時) (レス) id: 7b2bfdb44e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午睡 | 作成日時：2019年2月18日 19時
