若造騎士には落とされない ページ3
「烏合の衆」という名の自分の店が騒がしくなる午後九時頃。
悪意しかないゲテモノを懸命に食して撃沈した青年が机に突っ伏している。
ちょっと意識が遠のいているのを見るに相当まずかったのだろう。
味見しなくて心底よかったと思う。
「生きてるかァ？アールーマー？」
「いぎでまず…。」
「やっぱまずかった？」
「…愛を試されてるならノーコメントでいいですか？」
「アァーまずかったんだナ。」
ぐるぐる唸る青年は素直にうなずいた。
押しが強いところを除けば好青年と言わざるを終えない若造の残念な姿に俺はカラカラ笑う。
いつぞやから始まった若造騎士様、アルマ・ウォン・ヴィクトリアによる愛の告白入店。
面白ければなんでもいい酒が入った馬鹿共に冷やかされながら営業日の午後八時ちょい過ぎに必ず行われる寸劇だ。
いつの間にか告白されたかと思ったらいつの間にか常連になっていていつの間にかお決まりの席がある。
アルマの生家であるヴィクトリア家といえば国王様の剣といわれる騎士団長のお宅だ。
そんなところのお坊ちゃんが何を血迷ったのか掃きだめのダウンタウンに降りて、毎夜何の取り柄もない俺に好意を向けてくる。
最初は冗談かと軽く流していた若造を放っておけば今なお続いてしまっているのだから驚きだ。
嫌味なお貴族様が跋扈するアップタウンの凝り固まった高級志向などハナからなく、どんな安酒もダウンタウンの住人と同じようにうまそうに飲む。
茹でただけだとか焼いただけのツマミも幸せそうに食べる。
あっという間にダウンタウンに馴染んでしまったアルマを応援する阿呆共は毎夜行われる寸劇の行方を見に、足しげくこの店に通っていた。
「グロッキーなアルマはイイなァ。」
「ドSなギルさんも俺は大好きで…うっぷ…。」
「吐くなよォ。」
カウンターの向こう側で勤務中など気にせずウイスキーを煽る。
グロッキー状態になるぐらいなら見た目の時点で断ればいいのにえずきながら完食していた。
どんなにヤバいものでも俺が出せば文句ひとつ言わず食べきってしまう。
アルマの嫌そうな顔や懸命に耐える顔が好きな俺はマズいのをわかっていて、いつもゲテモノをアルマに差し出すのだ。
「アルマ。俺のことどのぐらい好きー？」
「世界の広さでも宇宙の広さでも表せないぐらい愛してます…うっ…。」
馬鹿らしい質問にもキリッとした顔で答え、再び突っ伏す。
この若造騎士をからかう為に俺はまだ落ちてやらない。
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午睡(プロフ) - 空弥さん» ご感想ありがとうございます！早めの更新を心掛けて頑張ります！ (2019年2月26日 19時) (
レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
午睡(プロフ) - ナッツさん» ご感想ありがとうございます！とっても励みになります…！ (2019年2月26日 19時) (レス) id: 3cc312a385 (このIDを非表示/違反報告)
空弥(プロフ) - 絡みがすごく可愛らしくて好みです……！作者様のペースで更新頑張ってください、応援してます (2019年2月24日 13時) (レス) id: 87c9fca00c (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - 好きです!!!最高です！続きめっちゃ気になります！更新楽しみにしてます!!!!!!! (2019年2月24日 3時) (レス) id: 7b2bfdb44e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：午睡 | 作成日時：2019年2月18日 19時
