悪魔の魅入り子、悪魔の見初め子<第三体育館組>

第３１話 ページ33

Aside


月「あの、」


蛍がゆっくりと話し出した

ゆっくりと、言いよどみながら


月「あなたから変な気配がするんです
　 よどんだような……」

貴「あぁ」

月「あと、その、」


そして、しばらく沈黙した


月「……、匂いがします」


どんな匂いかはよく言えないけど、と小さく続けられたそれに、ほんの少しだけ目を見張った


貴「……、おまえ、チカラ、貸したな？」


我が物顔で肩にで居座るトカゲ、ピンキーを小突く


月「えっ、」

貴「こいつのせいだよ、匂いがしたのは」


月島の目がゆっくりとピンキーへ向く


月「この子が……、」

貴「大方イタズラか、ただかまって欲しかったか、
　 まったく、何もわからないやつに手を出すんじゃない」


困ったやつだと思いながら、説明してやる


貴「こいつはピンキー、正しい名前は知らんから勝手にそう呼んでる
　 イタズラ好きでよく屋敷の中を荒らしまわっている
　 まぁ、面倒なのに好かれたな」


そういうと月島は……





物凄くビミョーな顔をした

どうやらすでにイタズラをされた後だったらしい

同情してやろう


月「あの、どうにかなりませんか」

貴「無理だな」


ピンキーは「きゅー」だか、「きー」だかよくわからん声を上げて舌を出した

うん、


貴「随分と気に入られてるな」


「迷惑」と即答したので苦笑してやる

こっちも迷惑だよ

なんでまたこいつにチカラを貸したんだか

そんなことすると、


月「そういえば、あなたがまとっている匂いとか、気配ってなんですか」


ほらみろ、これを聞かれるから嫌なんだ


貴「別に何でもない」

月「そんなはずはないです
　 匂いはともかく、気配は、」


と区切ると、まっすぐな目で「まるで違っています、あなたのものじゃない」と確信のこもった声で言った



あぁ、やめてくれ


その目は









俺は階段を飛び降りて「落ち着け」と目をふさいだ


貴「ゆっくり息をしろ」


月島は自分の異常に気が付いたようで、パニックを起こしかけていた


貴「大丈夫だ
　 少しあちら側に引きずられていただけ
　 何も心配はいらない」


そう言って俺よりもでかい体を支えながら、あやしてやった

側に“彼女”がいたので小さくハミングをしてもらう

月島はゆっくりと夢の世界へ誘われていった





ずっしりと重い体を支えながら思う



こいつは目覚めた

どうにかこっちに引き留めねば


だが、その前に






俺、動けないんだが、どうしよう

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