#06 ページ6
病室のドアが開く音がして、何歩か足音が聞こえて、隣には今市さんがいて。
「無理、してたみたいですよ」
どうやらただの風邪ではなく、扁桃炎だったようで、今は点滴で抗菌剤を投与してるらしい。
「今日はこのあと家でゆっくり寝て、明日は大事をとって休んでください」
「え……っで、でも…」
出張とか書類とか…まだ…
「僕が話しておきますから。大丈夫ですよ」
申し訳ない…
「…すいません…」
「…いえ、僕の方こそ、ごめんなさい…」
「え…」
なんで今市さんが謝るの…?
「体調悪いのに、倒れてしまうまで気が付かなくて…」
「い、いえっ…私が…私が全部悪いんです…」
「…結衣さん、あんまり自分一人で抱え込まないで下さいね?」
一人で…抱え込む…
「僕、結衣さんの力になれたらいいなって、思ってます」
「…あ…ありがとう…ございます…」
「…点滴、終わったら帰れるらしいんで、送っていきますね」
何から何まで…気が利くし、顔はいいし、仕事もできて…完璧な人だなぁ…
そんな人の近くに、私なんかがいていいのかな…
迷惑ばかり…負担をかけてばかりで…
「…私って…ダメだなぁ…」
誰もいない病室で、泣きそうに震える私の声は、情けなく響いた。
―――――
結衣さんを病院に連れていった時、看護婦さんから「この方、何かお薬飲まれてますか?」って聞かれたときに、申し訳ないけれど、結衣さんのバッグを調べて、中に入っていたお薬手帳を見せた。
看護婦さんが手帳を見て数分後、「ありがとうございます」と僕に手帳を返してきた。
看護婦が部屋に入って、僕は廊下のソファーに一人残された。
ふと目に入る手帳。悪いことだと分かっていた…けど、中を一ページだけめくった。それも一回ではなく、何度か通院しているみたい。
メンタルクリニックから処方されている薬だと知って結衣さんが「うつ病」だと分かった。
でも、落ちてる所とかは見たことがない。そんな素振り見せもしなかった。
仕事だって黙々と熱心にやる人だし、誰かに頼まれたことも全て…
…だからか…結衣さん、一人で抱え込むタイプなんだ…
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作者名:NightMare | 作成日時:2019年5月20日 22時