Dream Catcher (ページ19)

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#19 ページ19

―一ヶ月後
　
　
　市立病院に足を運んだ結衣。病室には空っぽのベッドがあった。
　
　結衣は花瓶の横に花束を置いて出ていく。
　
　
　向かった先は「リハビリテーション」と書かれた場所。
　覗いてみると
　
　
　「はい、ゆっくり…」
　
　剛典に指導を受けながら、片手でスロープを持ち、ゆっくり歩いている広臣の姿。
　
　
　三年間、ずっと眠り続けていた彼の体は、かなり痩せ細っていて、歩くのも困難だった。
　それでも、エリーや直己が発案した献立と、剛典がリハビリを担当し、ようやく最近は歩けるようになっている。
　
　剛典が結衣に気がつくと
　
　「少し休憩しましょうか」
　
　そう言われ、剛典の視線を追った広臣。
　結衣を見つけ、笑顔になる。
　
　
　
　「リハビリ、辛い？」
　
　長椅子に座っている広臣と結衣。
　結衣の質問は広臣に聞こえていないようだった。
　広臣はペットボトルの蓋を開けるのに苦労しているようだったので、結衣が少し緩めて広臣に渡した。
　
　「ん、辛いけど…大丈夫」
　
　ペットボトルの水を飲んで広臣は言う。
　
　「あとどれくらいって？」
　
　結衣が聞くと広臣は
　
　「今の調子だと、短くて三ヶ月…長くて半年だって。」
　「そっかぁ」
　「つーか、岩ちゃん厳しいんだよ…」
　
　剛典を「岩ちゃん」と呼ぶあたり、親しんでいるんだろう。
　
　「先生の言うこと聞かないとダメだよ」
　「岩ちゃん年下だからな？」
　「え、広臣２８歳だから、岩田さんと同い年でしょ？」
　「３１だわ。三年間寝てたからな」
　
　あの頃はもう笑って話せるようになった。
　
　
　
　「あのさ、結衣」
　「ん～？」
　
　広臣が結衣の方に体を向ける。
　
　
　
　
　「リハビリ…終わったらさ…」
　「…うん？」
　
　
　広臣は結衣越しに、ドアの向こうで
　頑張れ！とガッツポーズしている健二郎と隆二を見る。
　
　「…俺と…
　
　
　
　
　付き合って…くれる？」
　
　
　
　それを聞いた結衣は少々放心状態。
　
　「…あれ？結衣？」
　「えっ？えっ？」
　「いや…俺今めっちゃ頑張ったんだけど…」
　
　途端に顔が真っ赤になる結衣。結衣は顔を隠して
　
　「…私…で…良ければ…」
　
　と答える。広臣は結衣の顔を覆う両手を手で退かすと
　
　
　
　「待ってて」
　
　そう言って結衣の唇に、触れるだけのキスをした。
　
　