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男の人は、隣のベッドにシーツと服を重ねておくと
「お姉さん、初めましてですね」
と、人懐っこい様子で話しかけてきた。
「俺、ここの清掃係のエリーです」
「エリー…さんですか…初めまして、結衣です…」
「広臣さんの知り合いですか?」
知り合い…なのかな。夢で会ってますとか言えない。
「えぇ…まあ…」
「久しぶりに来たなぁ、お見舞いの人」
久しぶりってことは…
「あの…広臣のお見舞い来る人って…いないんですか?」
そう聞くとエリーさんは
「少し前はいたんすけどね。広臣のお父さんが来てました」
「お父さん?」
「はい。…まぁ、お父さんも、ここの病院に入院してたんすけど」
広臣のお父さん…終末期患者だったんだ…
「…お父様は…どこに?」
するとエリーさんは、少し寂しそうな笑顔で
「三日前、亡くなっちゃいました…」
それを聞いたら、なんだか申し訳なくて…
医者の人からしたら…辛いよね…患者が亡くなるって…
「…ごめんなさい…」
「なんで謝るんすか?それより、お姉さんは…広臣の彼女?」
「えっ!?」
さっきまでの悲しそうな顔はどこに…と思うほど、ニヤニヤしているエリーさん。
「え、違うんすか?」
「ち、ちっ、違います!」
「え〜?そうなの?あっ、すいません、着替えさせるんで、一旦いいっすか?」
カーテンで隔てられた私と、エリーさんと広臣。
光でエリーさんの影が写り、動いている。
「…ずっと…広臣のお世話してるんですか?」
「そうっすね。俺が新人の時から」
「…三年間、ずっと…?」
「そうっすね〜」
三年間…広臣は、あの夢の中にいるのか…
「…起きたくないのかも知れないっすね」
エリーさんが言った言葉に、どうして?と聞き返すと
「俺もガキの頃に、事故に遭ったんすよね。その時、目が覚めたら手足が無くなってたらどうしよう、とか、動かなかったらどうしよう、とか、思ったら怖くなって…目を開けたくなかったっすね」
怖い…
広臣も…怖いから、起きたくないの?
「その話を、広臣さんの親父さんに話したら、親父さん、広臣に何か置いてった気がしたけど…えっ〜と…」
なんだっけなぁ、とエリーさんが悩む。
もしかして…
「…ドリーム…キャッチャー?」
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作者名:NightMare | 作成日時:2019年5月20日 22時