夕陽に想う ≪2≫ ページ10
貴方side
まだ、醜い思考と感情を捨てれていない。醜い感情が篭った目で彼を見ることはできない。醜い感情が篭った声で彼を呼ぶことはできない。醜い感情が篭った手で彼に触れることはできない。……醜い自分が彼の隣にいることはできない。とはいえ、今、彼から逃げることはひどく不自然だ。
カ「輪廻、どうしたの？」
彼の声が、すぐ近くで聞こえる。…落ち着け。冷静になれ。彼を困らせることなどあってはならない。……、よし、大丈夫。ボクは、カルマの幼馴染で友達だ。ただ、それだけの関係。それ以下でもなければ、それ以上でもない。それぞれ、友達としてしか認識していない。もう、大丈夫。
貴「……なんでもないよ、カルマ。ちょっと立ち眩みしたから、目閉じて、立ち止まっていただけだよ。もう立ち眩みもしないから、大丈夫だよ」
今、ちゃんと笑えているだろうか。
カ「そっか。それなら良かった。じゃ、一緒に帰ろう」
安心したように笑う彼を見て、自分がちゃんと笑えていたことを確信した。ボクに背を向けて歩き出す彼を追いかけ、隣に並ぶ。なかなか来ないし、ライン送ったのに既読もつかないから心配したんだよ？と言う彼に、ごめんね、と困ったように笑いかけた。
夕方は、黄昏時ともいう。そして、黄昏時は誰そ彼時とも書く。夕方は人の認識がしにくくなる。今、ボクたちは誰からも認識されていないかもしれない。彼と共にどこへともなく消えてしまっても、気付かれないかもしれない。だったら、ボク達二人以外誰もいない世界へ消えてしまえればいいのに。
そんなことを考えてしまうボクは、やっぱりひどく醜いのだろう。
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作者名：咲夜 | 作成日時：2019年10月25日 0時
