夢【君は太陽】 ページ13
貴方side
ボクはずっとずっと太陽に焦がれていた。こんな遠くから見るだけじゃなくて、傍に居たい。ずっとそんな願いを持っていた。
『今日の彼はとても燃えていて、勇ましい。』
『今日の彼は雲に隠れて休憩している。彼を見れないのは寂しいけど、さぼっている彼はとても可愛らしい』
『今日は雨で一切彼の姿が見えない。雨なんて降らなければいいのに』
『今日は昨日から降り続く雨のせいで彼が見えなかった。でも、彼はやっぱり優しい。寂しがっているボクを案じて、雨に打ち勝ち姿を見せてくれた。それも虹を纏って。彼はとても美しい』
『今日は――――――――――――』
『今日は――――――――――――』
ある日、母はボクを白磁の塔に幽閉した。気味が悪いから、と。一体ボクの何処を気味が悪いというのか。幽閉された塔には、窓がなかった。これでは彼を見ることができない。ボクは悲嘆に暮れた。
そんなボクの前に、黒い翼を持った天使様が姿を現した。天使様は、彼に恋い焦がれながらも彼を見る事すら叶わないボクに同情したのだと言ってくださった。天使様は、ボクの望みを叶えてくれた。ボクに翼を与えてくださったのだ！そして、塔の最上階の部屋の壁に大きな穴を開けてくださった。久しぶりに見た彼は、勇ましく燃えていた。
笑みを浮かべている天使様にお礼を言い、ボクは彼に向かって飛び立った。後ろから下卑た笑い声が聞こえた気がしたが、そんなことは気にならなかった。
熱い。彼に近づけば近づくほど、肺が焼かれるほどの熱さに襲われる。でも、これは彼の熱なのだ。そう思うと、熱さは気にならなかった。
服が燃え始めた。熱いし、痛いけど、彼まで後もう少しなのだ。そんなこと気にしている場合ではない。
服を燃やしていた炎が、髪や身体に燃え移ってきた。痛い。痛い。でも、彼はすぐそこ。
空から灰が降ってくる。
ボクは、瞼を開いた。そして、ため息を吐く。
貴「…夢か」
いや、あながち夢ではないかもしれない。ボクにとっての太陽。いつか彼に焦がれるあまり近づきすぎて、灰になってしまう未来があるかもしれない。
貴「…身の程を弁えろってことかな」
でも、彼に焼かれて死ねるのであれば、それはボクにとっては幸せかもしれない。
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作者名：咲夜 | 作成日時：2019年10月25日 0時
