【完】マジうぜぇ。触んな。【Kei I】

番外編＊１ ページ27

『今日も来たよ、あの子…』


はぁ、と溜め息を吐きながら伊野尾くんがいるソファの隣に位置する椅子に座る。


伊「誰？」


興味がないのか、スマホの画面から一切こっちに意識すら向けて来ない。


『…多岐レイ子ちゃん』


多岐(たき)レイ子。


RDkT(あーるでぃーけーてぃー)という今最も人気の女性アイドルグループのセンターを務める女の子。


結構前から伊野尾くんに目をつけているようで、その子のせいで前のマネージャーさんも入院するはめになった。



伊「ふーん」


…いや、興味ないの？


こっちは命狙われてるかもしれないんだよ？


今日だって楽屋に来たい来たいって言うのを止めるのがどれだけ大変だったか。


次回の共演が決まったって言ってやっと、「じゃあ今度にする」と言われてやめてもらえたんだからね。



こっちがどれだけ苦労してるのか知らずにゲームやってればいいんだから、呑気で羨ましいわ。


伊「別に連れてくればいいじゃん。


連絡先交換すればいいんでしょ？」



…は？



ここ数ヶ月の私の苦労を水の泡にでもしようとしてるのコイツは？



そもそも、それは私の前で言う事なの？


いや、確かにまだ恋人らしい事は何もしてないよ？



ていうか、付き合おうとも何も言われてないし言ってないし…



恋人なのかも定かではない状態だし…



…最近はなんか凄く冷たいし。



それでも、好きって言ったんだから…


あれ、私、”好き”って言った？



いやいやいや、いいんだよこれで。



相手はイメージが命取りなんだから。


だから、尚更多岐レイ子ちゃんとは…。


いや、多岐ちゃんの方が芸能人でかわいらしいし、私なんかと噂されるよりはいいんじゃない？


多岐ちゃんも、裏でのイメージはともかく、表では凄くいい子だし。



って、何考えてるの私。



伊野尾くんが多岐さんといるのを週刊誌に撮られたら、私の首が飛ぶんだよ？多分。


月５０万がなくなるよ？



『と、とにかく、撮影中以外はあんまり一緒にいんなよ？


怒られるのは嫌なんだから…』




伊「はーい」



あー軽いな。

本当に大丈夫か？



唇を尖らせながらゲームに夢中になってる伊野尾くんを横目に、



私はこれから起こりそうな出来事に頭を抱えざるを得なかった。

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