【完】マジうぜぇ。触んな。【Kei I】

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谷「大丈夫？あんた、顔色悪いけど」


『はい』


戻ってきてすぐ、谷口さんにそう訪ねられて心臓がはねた。



体調が悪いってバレて休めって言われたら、５０万がなくなる。



そうだ、全部５０万のためなんだから、頑張らなきゃ。



５０万もらったら何しよう。



まず、最近実家に帰れてなかったから、お父さんに高いお酒でも買って持っていって上げよう。



お母さんには…



山「西宮さん？」



背後から声をかけられ、振り向くと綺麗な顔をしたアイドルがいて、



『お久しぶりです』



何故か彼は女性っぽい顔立ちだからかあまり緊張しなかった。


むしろ、伊野尾くんより接しやすいかもしれない。


…なんでここで伊野尾くんが出てくるの。



山「伊野尾がお世話になってます。あいつ、変な事やってませんか？」


あいつの話題っすか。


まじっすか。


『してません。真面目に、熱心に仕事をなさる方ですよね。凄く尊敬してます』



…なに嘘言ってんだか。


真面目に仕事してたとしても、熱心にやってるところなんて見た事無い。


下ネタは自分から前に出て言うけど。



山「真面目に、熱心に、ですか。ふふ」



『…はい』


笑われた。


まぁ、これが嘘だって、１０年近く一緒にいる人なら分かるよね。



でも、それくらい私は彼に興味が無い事も私の言葉で分かって欲しい。



ていうか、笑った顔も綺麗だな。


この人、同じ人間じゃないでしょ。



山「もうちょっと素直になってみたらどうですか？


顔に全部書いてありますよ」



『え？』



山「それでは、俺は次の仕事があるので失礼します」



軽く会釈して、まるで私の言葉を聞きたくないとでも言うかのように、



とっとと背を向けてスタジオを後にした。



素直？



顔に全部書いてある？



『私、わかりやすいですか？』


隣にいて、私達の話を聞いていたであろう谷口さんに訪ねた。


そうすると彼は、ちらっと私の方を見てから直に撮影中の伊野尾くんに目を向けた。



谷「この世界に長年いる彼には、一目で相手がどういう人物か見ぬく力が嫌でも身に付いちゃうのよ。


彼だけじゃなくて、他のメンバーも」




じゃあ、馬鹿そうに見える有岡くんも？



なら、私の本性も、私が必死で隠してるこの気持ちも、


もうとっくに彼らにはバレてるの？



じゃあ、もう、



『隠しても意味ないんだ』


谷「…え？」


『いえ、なんでもないです』

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