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番組収録が終わって、伊野尾くんが楽屋に戻ったのを見計らい、スタッフさんと事務所の先輩のマネージャー、そして芸能界の大物のマネージャーに挨拶をしてから伊野尾くんがいる楽屋に戻った。
『お疲れ様。
この後M誌の取材と撮影』
久しぶりに他のメンバーとマネージャーさんに会う。
楽しみだ。
なんて、ソファーでうつ伏せに寝っ転がってる彼には伝わらないようで。
伊「今日めっちゃ噛んだー」
そう。
彼は登場してから、自己紹介をする際に、何度も同じところで噛んでしまったのだ。
収録中はなんの素振りも見せず、飄々としていたのに。
彼からテーブルを挟んで向かい側に位置するソファーに腰掛け、足を組んだ。
こんな時、どう声をかけたらいいのかわからず、やっぱり私は、
『そんなこと言ってももう終わったことなんだから忘れろよ。
そんなうじうじしてたってなんもならないじゃん』
なんて可愛くないことしか言えず、口にした瞬間後悔する。
伊「……」
あ、やっぱり言いすぎたか。
でも、他になんて言えばいいのか。
顔を伏せたままでいる彼の表情や感情を読み取れず、少し焦っていると、彼が手招きしてきた。
そして、ここに座れとでも言うかのように、彼がいるすぐ横の1人用ソファーに指をさした。
あ、座れと。
いっそのことその顔を埋めているクッションを剥ぎ取ってやりたい。
なんて思いながら、言われた通りにする。
ここまで近くに来たのは久しぶりだ。
伊野尾くんのつむじが見え、なんとなく胸がくすぐったくなった。
『…なに』
そう呟くと、腕が伸びてきて、私の膝の上で開いたまま止まる。
…握れと。
む、無理。
いや、自分から男に触るとか…。
いや、
う、
そっと、私は右手を伸ばして、指先だけ、手の甲に触れる。
冷たくて、スベスベしてて、まるで女性のような手だったからか、気持ち悪いという気持ちはなく、むしろ親近感を覚えてしまった。
すぅっと指先を滑らせて、彼の中指の第一関節に触れる。
ごくっ、と彼が唾を飲む音がした。
そして、私の手をまた彼の掌に置くと、遠慮がちに彼は手を閉じ、強くはないがしっかりと私の手を握った。
あつい。
あの秋の中庭での日のように。
手から伝わってくる体温が、今の私にはあつすぎた。
まるでそこが心臓になったかのように脈打ち、初めて自分が緊張していることに気づく。
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Strawberry ryosu(プロフ) - コメント失礼します。今日初めて読ませていただきました。とても面白くて番外編までいっきに読んでしまいました。更新ゆっくりでもしてくれると、とても嬉しいです。頑張ってください (2017年1月2日 0時) (レス) id: 04fc7e113e (このIDを非表示/違反報告)
pumpkin☆ - なんかこのお話見たら、山田くんファンから伊野尾くんファンになっちゃいました笑いいお話ですね〜!番外編も頑張ってくださいね (2016年3月30日 0時) (レス) id: 468b78ebe2 (このIDを非表示/違反報告)
あめ - すごく面白かったです。これからも、頑張って下さい!o(・`д・´。) (2016年3月6日 2時) (レス) id: ea0c9cf643 (このIDを非表示/違反報告)
美伊也 - 面白かったです☆本当はもう少し続いて欲しかった、、、新作も楽しみにしてます! (2016年2月21日 14時) (レス) id: f559627c24 (このIDを非表示/違反報告)
しゅた★(プロフ) - すっごい、面白かったです! (2016年2月20日 0時) (レス) id: 55881e8c6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Haylee :D | 作成日時:2016年2月10日 0時