絶対逃がさない。【歌い手】

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*


「A…」




ふっと耳元にまふくんの声が聞こえる



「ん？」






「これから僕の言う通りに動いてね」





優しく甘い、いつもの声で彼は言う







「僕がここから出てあいつを引きつけるから、その間にAはそらるさん達と合流してね」





わかった？と聞いてくるけど

その話は、まふくんを奴の餌にして私だけ逃げるって意味だと思う




「い、嫌だよ」




「え〜、僕が逃げ切れないって思ってるの？」




そうじゃないのに、
まふくんがそういうの上手いって側にいる私が知らないわけがない



「そうじゃないけど…」




それでも怖いのだ。
私だけ逃げるなんてこと


すっごく嫌なんだ





「僕はAが生きてくれればそれでいいんだ」





「そんなのっ」




そんなの、私だって
まふくんが生きてくれればそれで良いのだ



「これは、僕からの愛情だと思って受け取ってね」



まふくんの服をぎゅっと掴むと、
頬にまふくんの手が伸びてくる



その瞬間、唇に触れた柔らかい感触と熱




ああ、キスされてるって思った。




まふくんが大好きだから
キスされるのが嬉しいって感じるのに



なんでまふくんがキスしてきたのか
その理由が、そうだと思ってしまうのが怖い






「Aのこと、愛してる」




そう彼が呟いた瞬間、ロッカーを彼は開けた





私が彼を止める間もなく、スッとすり抜けていく





「僕、チェイスが得意なの知ってるでしょ？A」






心配そうに見つめていたのがバレたのだろう




そんな笑顔で、言われたら

もうダメだなんて言葉が出なくて




きっと私は、彼を見る度に

彼のあの優しい表情と、声を思い出しちゃうんだろうな…




「あ、こんなとこにいたんだ？」



奴の声が聞こえた




「僕と鬼ごっこしましょう」




「えー女の子とがよかったなぁ…」







きっと、奴は私のことを狙って来てるんだ…






「まぁ、いいや。君を片付けた後にでも探すから」








その声が聞こえた直後、まふくんが走ったのがわかった




廊下を凄い速さで移動しているのがわかる



私は、とりあえずロッカーから出て
まふくんに言われた通り
そらるさん達と合流することにした

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