シチュエイターズ vol.８

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「はい、お待たせ」
「今日は麻婆豆腐習ってん」

「味の保証できへんけど」


前置きしながら侯くんが運んできたのは、料理教室で習ったって言う自慢の一品。

同棲始めてから通い出した料理教室。
毎週金曜日になると『遅刻したら先生に怒られるから』って、急いで職場を抜けて行く。
それを部下達は接待やと勘違いしてんのが、唯一理由を知ってる俺からしたらオモロくてしゃあない。

テーブルに料理が並んだら、向かい合って座り「いただきます」って手ぇ合わす。
『お互いどんなに遅くなっても家メシは一緒に食いたい』って侯くんの願望を取り入れてん。


「うんっ！うまいっ！」
「コレむっちゃ辛くしてくれてるぅ」

「今日の疲れ吹っ飛んだわぁ、侯くん」


「っは」


言葉少なに喜ぶ侯くんと暫く雑談を交わしてたら、ふと気になってたアノ事を思い出し聞いてみた。


「なぁ侯くん」
「今日ヤマダくんが作った旅行企画書見たやん？」

「あん時の侯くん、なーんか反応薄かって」
「どした、あんまり気に入らへんかった？」


侯くんは一瞬だけ箸の動き止めたけど、またモグモグと口動かしながら話を続ける。


「んぅ、そやった？」
「気のせいやろ、丁度忙しい時やったし」

「さっ、もう食ったか？」
「早よ片してゆっくりしよ」


すぐ話逸らすのは、何か隠し事してる証拠。

でもまぁ、俺が深読みしてるだけかもしらんし。
侯くんの事やから、何かあれば話してくれるやろ。


「ごちそうさまでした」


手ぇ合わして各々食器重ねたら、一緒にキッチンまで持って行く。


「温泉かぁ、何年ぶりやろ？」
「ネットでちょい調べたけど、大浴場むっちゃ広かってん」

「でな、何が良いって」
「全室露天風呂があんねんで」

「俺、侯くんとやったら」
「もぅずーっと露天風呂入っとける自信あるわ」


「はっはっ」
「章大と一緒の部屋になるかわからへんやん？」

「でもエエなぁ、露天風呂かぁ」
「星空とかむっちゃキレイに見えるんやろなぁ」


良かった。
社員旅行、楽しみにしてないワケじゃ無いらしい。


「侯くん」
「一緒に風呂入ろ？」


「……ん」


うし、じゃあ今から。
露天風呂のイチャつき方、一緒に研究しとこ。

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