シチュエイターズ vol.６

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「こんにちは」
「あの……どうかされました？」


レジに立ったままブツブツ文句垂れてたら、クロワッサン買いに来てくれたオネエサンに声掛けられて慌てて我に帰る。


「わぁ！ゴメンなさいっ！」
「いつものですよね、すぐ準備します」


あ、せや。
コノ時間なら確か焼きたてが……。

チャンス到来。
焼きたてクロワッサン、取りに行くフリして中に入ってまお。
エエやんな？
ちゃんとした用事があるんやから。


「ちょっと待ってて下さい」
「焼きたて、すぐ取って来ますから」


すぐさま振り返って厨房のドアを叩く。
中で何してんのか早く見たくて、勢い良くドアを開けた。


コンコンッ、ガチャ……


「…………」


中での光景見た瞬間、ドクンと胸が鳴る。

こっちからは後ろ姿しか見えなくて、何してんのかまではわからへんけど。
2人して作業台に向き、肩寄せ合って楽しそうに話す姿がそこにあった。


勢い良くドアを開けたから普通気付くハズやのに。
何か世界に入り込んでんのか、入口で佇む俺の存在にさえきみくんは気付いてくれない。


「…………」


厨房へ入ろうと一歩踏み込んでた足を戻したら、今度は音立てないようにそっとドアを閉めた。


「あぁ、ゴメンなさい」
「まだ焼き上がるのに時間掛かるみたいで……」


「あっ、全然大丈夫ですよ」
「こっちのクロワッサンだって美味しいから」


「……ありがとうございます」


顔は笑うて応対してるけど、ココロから素直に喜んでるワケや無い。
寧ろさっきの光景が頭ん中巡ってしゃあない。

動揺でもしてんのか。
焼きたてでもないのに焼きたて用の紙袋にクロワッサン詰めて渡したら、不思議そうな顔してオネエサンは帰ってった。


「あら、亮ちゃん？」
「焼きたてあるんなら店頭に出したら……」


「いや……ははは」
「ゴメン、俺勘違いしてもうた……ははは」


さっきの紙袋見てオバちゃんが厨房に入ろうとしたから、中見せたらアカンと咄嗟に判断して引き止める。

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