ニコイチには戻らない【望月穂波】 (ページ11)

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私は古川Aとはじめて昼を食べた日のことを
今でも鮮明に覚えている。

…Aちゃんは、もう覚えてないかもしれないけど。

私はその日、彼女をお昼に誘った。

そのとき、私はすごく顔が真っ赤だったと思う
全身の震えが止まらなくて、彼女の顔をまともに見れなかった

今思えばおかしな話だ
なんの接点もなかった私たちが屋上で仲睦まじくお昼を食べるなど

けれど、それでも良かった

このまま彼女と何も話せないまま
1年が経ってしまったら………と
頭を抱えて悩むより遥かにマシだった

私は焦っていた

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最初は彼女と楽しくお弁当を食べるつもりだった。

……が、どうしてこうなったのだろう。
今、私は彼女に向かって彼女の良さを熱弁している。

とにかく必死だった
仲良くなるには今日しかチャンスはないと思っていたからだ
彼女は基本的にひとりで行動するし、誘われても断っている

だから快く私とお昼を食べることを許可してくれた今日しか、彼女と関われるチャンスはない。そしてここで気に入られなければ一生話す機会は訪れないだろう

そもそもの話友達とはうまく気に入られようとしてまで作るものでは無いが、相手が古川さんとなれば話は別なのだ。だって大好きだから！

そんな感じで最初は猪突猛進よろしく熱弁していたが、段々と恥ずかしさが込み上げてきた。

あれ、今わたしとっても恥ずかしいことをしているのでは？？と気づいたが時すでに遅し。
私はもう彼女にほとんど喋ってしまった。詰んでいる。羞恥心で顔があがらない。

ここで開き直ってみるのもいいが、そんなことをしたら私は社会的に抹殺されて二度と日本の土を踏めなくなってしまう。ということで諦めた。
外の風が顔面に直撃して涼しい。じゃなくて。

ペアワーク以外でまともに話したのがこの会話って…
しかも会話っていうほど古川さん喋ってない…私の一方的…

この話、やっぱりつまんなかったかな？そうだよね！私のバカー！よし！今すぐ謝ろう！私の話つまんなかったよね？！ごめんね！次はもっと世のためになることと言うか政治について話をしない！？古川さん好きそう！！

謝るために伏せていた顔を勢いよくあげるが、言葉が出なかった。謝りたくなくなったとかじゃなくて

信じられないことに、あの表情を全く変えないで有名な古川Aさんの顔が真っ赤に染まっていたらだ

次に話そうと思っていた政治の話が全て頭から消え去った
ちなみに今日のお弁当のおかずはミートボールだ