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それから彼は私を隠してある国の豪勢な城の中へと入って行った。兵士の態度、受けている扱い、そして何より本人のオーラから、この国でも高い地位に位置する人間だということは一目で分かった。暫く話を聞いて分かった事だけれど、どうやら彼はこの国の外交官で、しかも幹部らしい。この国は割と新しい方で、それでも尚世界に名の知れている強い強い国、らしい。そんな御高貴なお立場の彼が、小汚い一匹の子猫を拾うのは気紛れか。それとも......
......そしてもう一つ分かったことがある。彼の部屋へ行く途中、周りの者は皆彼のことを『オスマン』と呼んだ。......これが、彼の名前。私の主人となるであろう、いや、そうする者の名前。
オスマンは部屋まで自分を連れていくと、ベッドの上にそっと放す。ふかふかのベッドは、紛うことない高級品だ。覚めた眠気が更に襲ってきそう。
「明日城下町で色々揃えてくるから、それまでは俺と一緒で勘弁してな。」
「ごはん......は後で図書館に本でも借りに行くか。この時間なら紫も居る事だろうし。」
「俺がいない時は......オプロイテに預けるか。幹部のヤツらには知られないようにした方がよさそうやなぁ......妙なちょっかい掛けそうなヤツが数人おるし。」
オスマンは本当に私を大切にしてくれた。毎日の美味しいご飯。暖かい寝床。優しい主人。とても幸せな生活と言えるだろう。
オスマンが外交へ出ている時は、オプロイテという女性が面倒を見てくれた。オスマンの部下だという彼女は、驚いたことに使用人などでは無く兵士だった。入れ替わり際にオスマンと会話をしている所を見て、どうやら彼は、外の人間と話す時はあの子供の時のように、畏まった言葉遣いをしているらしい。幹部の人間とは私と接するような方言なのだが、それはあの時......元枢機卿、と呼ばれていたことに関係するのか。
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作者名：はなし | 作成日時：2019年12月31日 20時
