【wrwrd!】出逢いを花束に代えて Ⅰ (ページ7)

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古びた教会、割れたステンドグラス、傾いたパイプオルガンに蔦と花が這う壁。タイルの剥がれた床には、微かに赤黒い斑点が散らばっている。乳白色の欠片も所々に点在している。
壊れかけた小さな教会の長椅子に寝かされ、包帯を巻かれる。
『元』枢機卿、と呼ばれた彼と、廃墟と化した教会。何となく、此処で何があったのかは察せた。何故此処に来たのかは分からないが。気まぐれだろうか、それとも何か此処に、あるのだろうか。
ボロボロの教会とは相反し、割れたステンドグラスから漏れ出る光が彼の髪を照らし、きらきらと煌めいていたのがとても綺麗だった。特別珍しくはない色の髪。私と同じ色。だけれど、今まで見てきたその色の中で、彼の髪の色は一番綺麗だった。

「よーし、できたで。痛くないか〜？」

彼の問いに、にゃおん、とひとつ鳴いて見せれば、そうかそうか、と頭を撫でてきた。

「首輪がないから飼い猫じゃなさそうやし......俺が持って帰ってもええんやろうか......」

どうやら彼は、自分を保護する気らしい。只の猫と勘違いされて複雑な気もしたが、その気持ちが素直に嬉しかった。そして自分は何より、この人間に興味を持っていた。遥か昔の、あの時以来の感覚。この人間が、この人なら......もう一度、自分の主人にできそうな気がする。
名前すら知らない彼。しかし私の気持ちは決まっていた。
不安がっている彼の手に擦り寄る。暖かい手にごちんと頭をぶつければ、一瞬驚いて。そのまま目を細めふわふわと撫でてくれる。

「せやなぁ、名前がなきゃあかんな......」

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