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「名前も知らない侵入者すぐ信じるなんて、貴方達正気？」
オスマンの服をずっとつまんでいた手を開き、そのまま一歩離れる。
正直、ここにいる人間が何を考えているのか......私にはわからない。少なくとも、今までこんなに歓迎されたことは、無かった。......人間が吸血鬼の存在を知ったら、まず否定するだろうに。人間から見て私達は......現実的に、科学的に考えて、まず有り得ない存在だと、とある科学者は言う。......何故？
......それとも。今までの幹部達の態度を見てきて気がついたが......全員がオスマンに、絶対的信頼を寄せている。
......そしてグルッペン、とかいう男。この国の総統閣下だと聞く。......こいつも、聞いているよりよっぽどの変わり者だ。余程、仲間を信頼しているのだろう。......到底できっこないし、できない。
「俺達は仲間の言うことを、そして君を信じただけだ。」
そう言ってのけるグルッペン。もきゅもきゅと特殊な音を立ててパンを口に詰め込む彼は、近寄り難い国のトップ、と言うよりは、何事にも興味を示す子供のようであった。周りの幹部達も、それに賛同するように頷く。......この国は、皆信頼し合って出来ている。
「我はこの国......クリークの総統、グルッペン・フューラーだ。」
クリーク。別名、我々国。各々が我、という一人称の後に名乗る為に言われ始めた名称。
カトラリーを机に置き、自身の体の方向を変えてこちらを真っ直ぐ見据えるグルッペン。口元には不敵な笑み。グルッペンは、メガネを一度くい、と直してから、再度口を開いた。
「お前の名はなんだ？」
オスマンに付けてもらった、お前の名前を、胸を張って言ってみろ、と。
......上等じゃない。
「我が名は吸血鬼の真祖、嫉妬のサーヴァンプ’’
皆が知っているけど、知らない私。......彼と契約する事になったのは、本当に正解だった。
暫くここで過ごす事は、束の間の退屈凌ぎになりそうだ。
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作者名：はなし | 作成日時：2019年12月31日 20時
