【wrwrd!】出逢いを花束に代えて Ⅰ (ページ16)

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お互い準備をし終え、部屋を出る。Aは猫の姿のまま、自分の腕の中だ。Aは初めて出た廊下の広さに感嘆しながら、周りをきょろきょろと見てあたりを観察しているようだった。すれ違う兵士や使用人は皆、驚いた顔で俺の顔と子猫を交互に見る。それを自然に避けながら、食堂の大きな扉を開ける。仕事で医務室に籠りっぱなしのしんぺい神と、他国に出張中の兄さんを除き、珍しく大先生までもが既に揃っている中、全員の視線は遅れてきた俺と、その腕の中の子猫に降り注いだ。

「おはようさん。」

「おはよう、オスマン。珍しいな、お前が遅れてくるのは。」

いつも通り、飄々とした態度で手をひらひらさせ朝の挨拶をする。まず最初に返してきたのは一番向こうの誕生日席に座ったうちの総統......グルッペン・フューラー。グルッペンに続き、他の面々もバラバラに挨拶を返す。その様子は......まぁ、いつも通りとは言えないだろう。

「して、その子猫は......」

グルッペンが手を組み、本題を切り出してきた。疑問を問いかける、と言うよりは、興味津々でAのことを見ているようだった。他の者も、普段身近でまじまじと見ることの無い猫に興味を示しているようで、ひとらんなんかは周りにキラキラが見えるほどのオーラを放っていた。......思ったよりも全然、平和な反応でよかった。

「グルッペン。......んで、皆。その事について、話があるんよ。」

Aを腕に抱えたまま、コツコツとブーツを鳴らして席......ではなく、窓際へ歩く。カーテンの端を掴み、甲高い音を立てて一気に閉じる。全て閉じきり、部屋の中が人工的な光で照らされるだけの空間なったことを確認し、振り返る。突然の行動の意味を把握出来ず、少々困惑気味の顔がちらほら見えた。でもこうしないと話も出来へんからな。
部屋を照らす日光が遮断され、Aはやっと眩しさで細めていた目をぱちくりと開いた。

「その猫ちゃんの話か？それって？」

窓際の席についていたシャオロンが立ち上がり、Aを触ろうと近寄る。......が。
Aはシャオロンが手を出した瞬間、俺の腕の中を飛び抜けて、シャオロンの手の甲を......引っ掻いた。