【wrwrd!】出逢いを花束に代えて Ⅰ (ページ15)

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小鳥の微かな囀りと共に、開けっ放しの大窓から光が差し込める。いつもと同じ時間、いつもと同じように自然と目を覚ます。布団を捲れば、いつもと同じように子猫が寄り添い、丸まってすやすやと寝息を立てている。いつもと違うことといえばｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ

「(昨日のこと、全部現実なんやな......)」

昨晩起きた、夢のような一連の出来事。それは全て現実、とでも語るかのように、片付け忘れたティーカップからは未だに湯気が上がっていた。

『契約って言っても、私はオスマンの血をまだ飲んでない。サーヴァンプが私たちのこの状態でオスマンの血を飲むと、契約が本当に成立しちゃうの。』

『......やっぱり、血ぃ飲むんやな。』

『そりゃあ吸血鬼だから飲むわよ。......仮契約を解除する方法はある。まぁ吸血鬼の戦闘能力はとんでもないから、戦闘要員としてなら置いてもらえるんじゃないかしら？ここの総統さん、変わってるらしいし。......吸血鬼と契約することで、どうなるか......自分が一番知ってるでしょう？』

ゆっくり、考えて。と、彼女は言った。あの晩は結局、コックに一人分多くご飯を作らせることを伝え、そのままAと一緒に寝た。さすがに人の姿のままだとベッドの狭さ的に厳しいものがあるので、いつものように、人一人と猫一匹で寄り添いあって眠った。
幹部達にはAの事は一切知られていない。個室にカメラはないから、ロボロにすら分かっていないだろう。コネシマやシャオロンあたりならすぐ顔に出そうだが、自分は職業柄、人の顔色を読むのも、自分の秘密を隠すのも得意だ。今日の朝食は全員が揃っている頃......つまり、少しだけ遅れていって、Aの事を話すつもりだ。どうなるかは分からない。吸血鬼なんて、現実味のない話......信じてくれるか、どうか。自分の話術に、かかっている。Aを手放すのだけは......どうしても避けたい。

「A、朝やで。起きぃや」

ぽんぽん、と優しく腹をたたく。子猫は小さく唸りながら、くぁあ、とあくびをする。

「おはよ......」

まだ開ききらないAの瞼を撫でながら、挨拶を返す。猫が喋るのは、やはり不思議な感覚だ。Aはそのままぴょんとベッドを飛び降り、カーテンを口でつまみ器用に閉める。そのままとてとてと洗面所へ歩いていった。