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解熱剤 ページ49

「……座れ」

丸椅子に腰掛けると、体温計を渡される。
脇に挟むがあまり力が入らない。
見かねた先生が呆れたように私の腕を押さえる。

そっと見上げると、ものすごく厳しい顔で、何か考えごとをしているようだった。

電子音がなり、体温計を取り出す。
やはり熱は高い。

「口を開けろ」

喉を診られ、首元に手が触れる。
程よく冷たい手が気持ちよくて、目を閉じた。

「喉は、痛いか」

頷くと、彼は手を離す。

「他は?」
「……筋肉が、痛いです」

太腿の筋肉が、つっぱったように痛む。

「それは高熱のせいだな」

俯いて、床を見る。
怖い。今すぐにでも椅子から立ち上がって、逃げ出してしまいたい。

「解熱剤を打つ。用意をしてくるからそこで待ってろ」

先生はそう言って部屋を出る。
私は震える身体を両腕で抱いた。

……冷ややかな表情が、こわい。
まるで、自分の人権などないような気がしてしまう。

すぐに先生は戻って来て、器具を机のうえに置いた。

「……腕を出せ」

左腕を机の上にそっと置く。
袖が捲られ、ひんやりとしたガーゼが肌を擦る。

震えが止まらなくて、手に力が入る。

先生の手がそっと私の手の甲を撫でた。

「力を入れるな」

優しい声色だった。
涙がこぼれ落ちる。

「……せんせい、痛いの、いやだ」

余計に怒られるだろうと思ったが、先生は呆れたようにため息をついただけだった。

「……なら力を抜け。入れていると痛むぞ」

針の先端が腕の中に埋まっていく。
液体が注入され、さらに力が入ってしまう。

先生は手を押さえている方の親指で、優しく私の手首を撫でる。

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ステラ - 信じられないほどドキドキします(?)主さんの作品がめっっっちゃくちゃ好きです!!!最高です!!楽しみが増えました! (2022年6月4日 9時) (レス) @page50 id: 1d9e4d2339 (このIDを非表示/違反報告)
瀬央 - 続きが楽しみです! (2018年10月18日 23時) (レス) id: 7188a9c310 (このIDを非表示/違反報告)
ふーか(プロフ) - 前の作品から大好きです!!続き楽しみです! (2018年7月1日 17時) (レス) id: 7a5dbc0816 (このIDを非表示/違反報告)
タケノン(プロフ) - 猫ザクラさん» 飛び上がりましたか笑 ありがとうございます。これからもぜひ読んでくださると嬉しいです(  ̄▽ ̄) (2018年6月26日 22時) (レス) id: bf709e921d (このIDを非表示/違反報告)
タケノン(プロフ) - ハジメマシテさん» 様付けされるような者じゃないんで!!笑 書くのは楽しいので時間のある時にコツコツこそこそと……。 (2018年6月26日 22時) (レス) id: bf709e921d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:タケノン | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年3月27日 16時

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