Episode134.強さ-side.you ページ45
.
涙をどうにかこうにか耐えようと、目に力を込めた
「え、なんや今度は......そない睨まんでもええやん...」
『...睨んでないです。耐えてるんです』
睨んでいるように見えたらしい。ごめんねトントンさん。
「な、何を耐えてるん？」
『泣くのを』
ぱちりと赤い瞳が瞬いた
しかしその直後、本日二度目の深いため息が耳を掠める
幸せが逃げますよ、トントンさん。
「なんで耐える必要があんねん。泣きたいなら泣けばええやん」
『嫌です。俺、強くなるまで泣かないって誓ったんで』
俺のきっぱりした物言いに、トントンさんははぁ？とでも言いたげな表情を浮かべる
ふい、と彼から顔を逸らした
「お前十分強いやん」
『そういう意味じゃないんです』
「？いや、そういう意味やろ。ったく、お前ほんま阿呆やなぁ」
『あほ、......！？』
思わず眉を寄せてトントンさんの顔を見る
彼は、ただ柔らかく笑っていた
「A、泣くことも強さなんやで」
目を見開いた
瞬間、我慢していた涙がぽろりと頬に落ちる
言い返そうとしていた唇が震えて、言葉が出てこない
泣くことも、強さ？惨めに泣くことが？
そうは思ってるものの、一度零れ落ちた涙は止めどなく溢れてくる
おかしい。俺の涙腺は壊れてしまったのだろうか
こんな、たった一言で泣いてしまうなんて
......いや、もしかしたらトントンさんだったからこそ、涙が止まらないのだろうか
ただただ無言で涙を流す俺に、トントンさんはまたわたわたと慌てている
暫くそうしていたトントンさんは、何かを決心するように頷くとこちらに手を伸ばしてきた
『っ、......』
恐る恐るといった様子で、頭を撫でられる
ぎこちなくて、優しくて、大きくて、暖かい手。
ああもう、本当にこの人は。
『トントンさんの、ばぁか......』
「なんでや！？」
そんな会話をしている間も、頭は撫でられたまま。
「あーあ、トントン泣かせてやんの〜」
ふいに聞き覚えのある声がトントンさんの後ろから聞こえた
それと同時にいくつもの足音が聞こえてくる
......十中八九、幹部の皆様だろう。トントンさんがいた時点でなんとなく察していたけど。
ぐいっと強く目元を拭って顔を上げれば、大きな手がゆっくりと頭から離れていった
トントンさんの後ろに目を向けると、予想通り幹部の方々。
まさかの勢ぞろいである
『...仕事はよろしいのですか、皆様』
「勝手に抜け出したお前に言われたくないんだよなぁ」
Episode135.歓迎しよう-side.you→←Episode133.生きてる-side.you
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1326人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Rettosei_0822(プロフ) - とても面白かったです！これからも執筆頑張って下さい。最後のshpから譲り受けたゴーグルはどうなったんですか？ (5月31日 3時) (
レス) @page48 id: c34cfad174 (このIDを非表示/違反報告)
雫 - もう最高でした! それから涙腺崩壊何回したことか…。・°°・(＞_＜)・°°・。作者様このような作品有難う御座います。ふふっ楽しく悲しく読ませていただきました。 (2020年6月14日 12時) (レス) id: 823e106573 (このIDを非表示/違反報告)
モノトーン - 性癖にドストライクでした。こんな神作をありがとうございました。次の作品もめっさ楽しみに待ってます。 (2020年4月3日 22時) (レス) id: c6c1282ede (このIDを非表示/違反報告)
HARUKA(プロフ) - 感動して泣きました。この様な素晴らしい作品に出会えてとても幸せです。素晴らしい作品を作って頂き、本当にありがとうございました。これからも頑張って下さい。 (2019年8月4日 16時) (レス) id: c358560c76 (このIDを非表示/違反報告)
クロ - 完結おめでとうございます。楽しく読まさせていただきました。凄く好きです…ありがとうございました…！ (2019年2月23日 22時) (レス) id: 4dc1d00e9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍色鳩羽 | 作成日時：2018年12月1日 0時
