虹色花火 (ページ22)

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君の隣にページ22

「ほんまに平気？」

眉を極限まで下げてそう言う彼に、「平気」と笑う。

靴を履いてドアを開けると、少しだけここから離れることを躊躇ったが、帰らないわけにもいかない。

「望、ほんまにごめんな。」

「えっ？」

「明日オフやったのに、俺のせいで今日の分の撮影やん。」

「ええよ、別に。」

彼はふわりと微笑む。

「それより、しげに謝った方が身の安全のためやで。」

「ふふっ、せやね。」

そうやって彼と笑い合うだけで幸せを感じた。

…もっと話していたい。

そんな願いも届かず、というか言えず。

別れの挨拶をし、望の家を離れる。

明日からはまた元に戻ってしまうのだろうか。

君の隣は、俺じゃなくて…。

ポツンと頬に冷たさを感じた。

えっ、俺泣いてる？と涙を拭う素振りをしてみるが、涙は出ていなかった。

じめっとした空気。冷たい風。

空を見上げると、晴れていたはずの空が黒い雲で覆われていた。

雨だ。

俺は慌てて近くのコンビニに入る。

「いらっしゃいませー」の声に、なにか買った方がええかなという気持ちになってしまった。

「流星っ！」

ガバッと抱き着いてくる彼の姿に驚く。

「神ちゃん…？」

夢か、幻か。

彼が他人に抱き着く姿なんて、今まで一度も見たことがなかった。

「もう回復したん？」

「した、けど…」

「良かった…ほんまに良かった…」

今すぐにでも泣き出しそうな神ちゃんの背中をそっと撫でる。

「心配してくれてありがとう」と言えば、彼はへへへ、と笑った。

何故だろうか。

何の躊躇いもなく、彼の背中に触れられる。

感謝の気持ちを、照れずに言える。

なのに、望だとそれがうまくいかない。

もっと見つめていたいのに、もっとそばにいたいのに…。

外を見るとまだ雨がザーザーと降っていた。

傘を買おうとビニール傘を手に取ると、なぜか神ちゃんに止められた。

「傘、貸したる。」

「えっ？ええの？」

「俺、ここでしげのこと待っとるからさぁ。」

「…そっか。」

お言葉に甘えて。と神ちゃんから傘を受け取る。

「明日ね！」と大きく手を振る神ちゃんに反比例して小さく手を振る。

少しだけ、彼に癒された気がした。

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