虹色花火 (ページ12)

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俺だけ。ページ12

「なんなん、なんで歩いてるだけであんなに女子が寄ってくるん！？」

屋上にて。

ここまで来るのにどれくらいかかったのだろうか。

女子達が流星に群がって、なかなか前に進めなかった。

たかが七十メートルの距離を十五分もかけて歩く必要性が見い出せない。

「まぁ、食べよ。」

まだ眠そうな彼が、弁当箱の蓋を開ける。

俺も弁当箱を取り出し、蓋を開けた。

「あー、流星不足。」

俺のこの一言で、二人の世界は始まる。

彼の腕を引っ張り、あっさりと唇を奪う。

可愛い声が漏れると、まぁ優しい俺は彼から離れる。

「しげっ…学校やんっ…」

「最近流星、家に来てくれないやんかぁ。不足してんねん。」

「せやけど…」

「せやけど何？悪いんはそっちやろ？」

「しげ…」

「というか、二人きりやで？大毅やろ？」

顔を赤くして「だぁき…」と呼んでくれるあたり、嫌ではないだろう。

学校で、イチャコラするのが。

．

「ん、もぉええやろ…」

「不足してんねん言うてるやろ。」

キスを何度も彼にする。

彼は呆れたような顔をするが、本当は嫌ではないのを俺は知っている。

「ん、やぁ、大毅。今日家行くから…」

「ふぅん、来なかったらどうなるか分かっとる？」

「分かっとる。大毅、寂しいやろ？」

「寂しいのはそっちやん。」

そう言ってまたキスを落とす。

もちろん、家に流星が来てくれないのは寂しい。

それが見透かされていることも知っていた。

でも、二人きりの時だけはカッコつけさせて…？

「なぁ、俺腹減った。」

「俺の心を満たしてから腹を満たせぇ！」

これが最後。と決めて、深いのをする。

彼の可愛い声がきこえ、もう一度したかったが、残念ながら俺は優しい。

ゆっくりと離れると、今度は彼が俺に抱きついてきた。

「流星？」

流星は俺の肩に顔を埋める。

「なしたん？」

返事はない。

その代わりに、彼は腕の力をぎゅっと強めた。

「まだ…。」

「ん？」

「まだ、俺の心が満たされてへん…」

わぁ、可愛い。

俺は彼を抱き締めてから、「満たしたる。」と言った。

これが、俺だけの流星。

俺だけに見せる素顔。

やっぱり俺の心は流星にしか満たせないみたいだ。

「大毅、好きや。」

「知ってるわ。」

結局、弁当箱に手をつけたのはチャイムが鳴る直前だった。

『俺だけ。』 Fin .