君がいなきゃ！ (ページ5)

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▽緊張ページ5

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「A！もうすぐ出番だよ！」

「う、……あれ、寝てた？」

「うん、それはもうぐっすりと」

気が付いたら机に突っ伏せて眠っていたらしい。今日は劇場でコントをする日。私達は漫才もコントも同じぐらいの頻度でするようにしている。テレビでするのはコントが多めだけど。

「ごめん、ちゃんとネタ合わせできてなくて」

「いーよいーよ、もう何回もしたでしょ？」

「でも、新ネタだし……」

「大丈夫、ちゃんとセリフ覚えてるし、このネタでウケないわけないから。ね？」

「……うん、そうだよね。ありがとう」

新ネタ披露の前はいつも以上にウジウジしてしまう私を助けてくれる葵には感謝しかない。
「一緒にお笑いやろう！」って言われた時はどうなるかと思ったけど、今はすごく楽しい。

衣装に着替えて舞台袖に立つ。出番前は毎回緊張する。心臓の音で何も聞こえなくなっている私の背中を、誰かがポンと叩いた。

顔を上げるとそこにいたのは大樹で、一瞬自分が幻覚を見てるんじゃないかと思う。目の前の彼は薄暗い中明るい笑顔を見せた。

「ガチガチじゃん、今日新ネタ？」

「う、ん」

「まじか、超楽しみ！佐々の葉のネタハズレねぇからなー」

「大樹、なんでいるの」

「え？俺らも出るからに決まってんじゃん。出演者見てなかったの？」

「……見てなかった」

新ネタのことで頭がいっぱいで確認できてなかった。そんなのありえない、何年芸人やってんだ。って怒られても仕方ない。でも大樹は「そんなことある！？」と面白そうに笑うだけだった。

何か言い返そうと口を開いたそのとき、出囃子がなる。いつの間にか肩の力は抜けていて自分でもびっくりした。

「よし、行ってらっしゃい！」

「い、いってきます……？」

髪型を崩さないように優しく頭を撫でられる。……大樹のおかげで緊張がとけたみたい。またあとでお礼言わなきゃ。拳をぎゅっと握って一歩踏み出した。

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