▽収録後 ページ2
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楽屋のドアを閉めて深く息を吐く。
今日の収録、あんまり上手くいかなかった。MCの人がふってくれたのに上手く返せなかったし、話に入れなかったし……。ピンの仕事は大体上手くいかない。
テレビに出させてもらってるんだし、そろそろちゃんと出来るようにならなきゃ。帰る支度をしながら考えているとコンコンとドアがなった。
「あ、よかったまだいた！おつ〜」
「ねぇまだ返事してないんだけど……そっちこそお疲れ、何か用？」
「んー、まだいるかなーって何となく来ただけ」
なんて太陽みたいに笑う大樹。彼は同期で、今をときめく芸人だ。私なんかよりも才能があって、人気者で……なのに、いつも私のことを気にかけてくれている。
「なんでそんな暗い顔してんの？」
「え、別に普通の顔だけど」
「ばかだなー、そんなんで俺を騙せるわけねーじゃん。なに、また収録ダメだったーって凹んでる感じ？」
大樹には何故か隠し事ができない。よく人を見ているせいか、いっつもバレてしまう。観念して頷けばわしゃわしゃ雑に頭を撫でられた。
「あのさ、いつも言ってるけど気にしすぎ！今日だってめっちゃウケてたし、Aの理想が高すぎなんじゃない？」
「そう、なのかな」
「そーなの！とにかく、今日はゆっくり寝な？ピンの仕事って色々気使うし疲れるよな」
「……うん、ありがとう」
彼と話すだけで疲れが取れるのは、彼の真っ直ぐな性格のおかけだろう。お礼を言えば何のこと？ととぼけるいつものくだり。こうやって助けられるのは何回目か分からないし、とりあえずもう一度小さな声でありがとうと呟いた。
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作者名：まるる。 | 作成日時：2021年3月6日 22時
