せいらウィッチ (ページ2)

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其ノ貮ページ2

その日からだった。

春夏冬の様子がおかしくなったのは。

いや、僕がおかしくなったのではないかと

考えはしたものの

数年間見てきた僕からしても

やはりおかしかった。

成績は上の中ぐらい。かなりの優等生である。

誰にでも優しい、

それが彼女の取り柄でもあるだろう。

なのに今日は変だった。

やたら人を避けて、話しかけられれば

嫌悪丸出しだ。

今までの彼女ではあり得ない行動だった。

天地がひっくり返ってもそんなことはない。

絶対にあり得ないのだ。

さらに、授業中にも寝ていてついさっき

叱られたばっかである。

人に隙を見せることなどないはずだ。

何故なら彼女は昔、誘拐にあっている。

それをトラウマに思っている彼女が

寝るなど、そんな無防備な姿を

大勢の前で晒すわけがないのだ。

そもそものところ、優等生であるのだから

寝ることなんて信じられないのだが。

すると、春夏冬の席の近くに

ノートが落ちているのが目に入った。

『春夏冬青藍』

と、名前が書いてある。

中身を見てみようと手を伸ばす。

だが、覗いてはいけない気がした。

僕の理性がそう伝達してきた。

しかし本能には勝てない。

ゆっくりとノートを開く。

この時点でもう僕は

後戻りできなくなっていたのかもしれない。

そこには、読み取りにくい僕が知らない

文字で並べられた、魔法陣のようなものが

書かれていた。

尋常じゃない力を感じるような気がした。

春夏冬がこんなことを書くはずがない。

考えることができるのは彼女に

なんらかの変化が起きた、ということだ。

僕はとりあえず、あの人に相談してみようと思った。