30話 十一月七日 午前一時五十六分 ページ36
その夜、俺はどこか見覚えのある山の頂に立っていた。
目の前に女の子が立っていて、こちらに背を向けている。
その女の子の後ろ姿を見て、なんとなく、ああ これは夢なんだなと理解する。
だって、いるはずのない彼女が目の前にいるのだから。
どうしてそう思ったのか分からないけど、
なんとなく、そう思った。
「あの時、何も言ってやれなくてごめんな」
突如自分の口から出た言葉に驚いた。
しかし彼女は何も言わなかった。
『………』
それがどうしようもなく悲しくて、俺は叫んだ。
「ッ……! 俺っ!!あの時言えなかったけど、Aのこと好きだ、大好きなんだ!!!」
『もー、遅いし!』
ふっ、と笑う声がして、女の子はこちらを振り返ると、頬を染めて幸せそうに笑った。
その笑顔に既視感を覚える。
たくさんの彼女との思い出が走馬灯のように浮かんでくる。
でも、それを見ても若干の懐かしさは感じるものの、覚えがなかった。
「ごめん、君のこと、やっぱり……」
『覚えてない、よね。
…私はAです。もうすぐ消えちゃうだろうけど、よろしくね。』
そう言って、眉を下げて笑うA。
その寂しげな声に、胸が痛んだ。
「っ………」
『炭治郎、思い出そうとしてくれてありがとね。
……私は死んで、存在していた事実を消されるのが嫌だった、怖かった。だけど、完全に消されるわけじゃなくて、残せたものもたくさんあった。本当によかったよ…
ね、炭治郎。最後のお願いしてもいい?』
「っ…なんだ?」
『さっきの、もう一回言ってよ』
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めでぃ - はっ!あの??視点って誰かわかりました!! (2019年11月21日 7時) (レス) id: 44879474c1 (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - ああぁあぁああ...切ないですぅぅ...泣 お話が素敵すぎて思わず感情移入してしまいました泣 更新お疲れ様です!体調に気をつけてまた更新頑張ってください! (2019年9月12日 0時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
舞菜(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» 新作の方も見に来てくださってありがとうございます!嬉しいです(〃ω〃) これからも読みやすい文章を心がけて更新頑張るので、楽しみにしていてください! (2019年9月6日 0時) (レス) id: 1e7a191f2a (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - お話とっても魅力的ですね!読むうちにどんどん引き込まれてしまいました!体調に気をつけて更新頑張ってください!応援しています! (2019年9月5日 1時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞菜 | 作成日時:2019年9月3日 0時