帰らないで ページ36
「...それも、まやかしです。」
「まやかし？」
「人間は幸せになりたいという願望を本能的に持ってる生き物なんです。幸せになりたいと思わないっていうのはただの思い込みです。」
「...じゃあその思い込みを捨てるにはどうしたらいいんですか」
「素直になってください。自分の気持ちに正直になって、」
「なんか宗教やってます？」
「...茶化さないでくださいよ」
「じゃあ、素直に正直に、人妻を連れて逃げたっていいんだ。」
「っダメに決まってるじゃないですか！」
「なんで？素直になったら幸せになれるんでしょ」
「っ違います今話してるのは幸せになりたいと思わないという思い込みを捨てるにはどうすればいいかって話で、素直になれば、本当は幸せになりたいっていう思いがある事に気付けるはずって...っ」
頭がくらっとして、私は目をぎゅっとつむった。
深呼吸をした後、目を開けると、マグカップが見えた。
「...大丈夫？」
ドさんからマグカップを受け取って、それを飲んで息をついた。
「横になった方がいいですよ」
私はのろのろとベッドに這い上がって、ごろんと横たわった。
立ち上がったドさんが、布団をかけてくれた。
「前に、言ってたじゃないですか。前世からやり直して、良い人生にしたいって」
「...そんな事言ったっけ」
「良い人生にしたいって、思ってるんでしょう？」
「...それは、生まれる所からやり直せたらの話だし。」
「っ...」
言い返そうとして口を開くと、ドさんの手が動いた。
それは宙を泳いで近づいて来て、私のおでこにすっと着地した。
じんわり、心地好い感触。
「冷えピタ貼る？」
「...大丈夫です」
伝えたい思いはひらりひらりとかわされて、全く受け取ってもらえない。
もどかしくてたまらなかった。
「...そんな怖い顔しないで」
そう呟くと、ドさんは私の眉間を親指でくるくるとほぐして、手を離した。
「...帰りますね。俺がいると、休めないでしょ。」
ふっと笑った顔を、私は黙って見上げていた。
どうしてこんなに無力なんだろう。
こんなに好きなのに、どうして何もできないんだろう。
「...お大事に。」
くるっと背中を向けたドさん。
反射的に手を伸ばした。
Tシャツの後ろをつかんで、引っ張った。
「帰らないで...」
やっぱり熱があるのかもしれない。
今の私は、諦めが悪い。
「蜘蛛が...。」
ドさんの、呆れた顔。
そんな顔も、やっぱりかっこいいんだ。
って言ってる場合じゃないんだけど。
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nico(プロフ) - karanafnさん» キュンキュンしますか？(^-^)嬉しいです！ギョンスはいつになったら素直になるんでしょうか？次章にご期待ください(保証はできません)(^｡^) (2017年6月24日 13時) (
レス) id: ff69cf6a49 (このIDを非表示/違反報告)
karanafn(プロフ) - ギョンス素直になってぇT_Tでもそのもどかしさが好きです！！！キュンキュンします！ (2017年6月23日 13時) (レス) id: ddff2ab7b9 (このIDを非表示/違反報告)
nico(プロフ) - HAPPAさん» 初めまして、コメントありがとうございます！こちらこそ、読んでくださって本当にありがとうございます。あったかい気持ちになるなんて、すごく嬉しいです。次章も是非お付き合いください。頑張ります！(^-^) (2017年6月21日 23時) (レス) id: ff69cf6a49 (このIDを非表示/違反報告)
HAPPA(プロフ) - 初めまして☆いつも素敵なお話ありがとうございます。本当に楽しく、切なく、でも優しいお話であったかい気持ちになれます。これからも続き楽しみにしてます(^^) (2017年6月21日 23時) (レス) id: c3e69e13fc (このIDを非表示/違反報告)
nico(プロフ) - クミさん» コメントありがとうございます！嬉しいです。更新が多いと言ってくださって恐縮です…もっと頑張れたらいいんですが（´-`）この先どうなるのか、続きも読んでもらえると嬉しいです(^-^) (2017年6月15日 1時) (レス) id: ff69cf6a49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：nico | 作成日時：2017年4月26日 21時
